隣人(hyde)

河南と婚約をしたことで
河南の部屋で生活をするようになった俺。

俺の部屋は俺の仕事部屋と
衣装部屋にした。

そしてLINEのやりとりも増えた。

今日は遅くなるから先に寝ててな
今日は打ち合わせがあるから夕飯はいらんよとか
お互いのスケジュールを共有して把握するのも
河南が俺の側にいるのだと優越感に浸れる。

それなのに
俺が帰宅しても河南の姿がなく
苛立ちと不安が募る。

遠慮がちに鳴る携帯。

河南からだ。

どうやら同僚たちに合コンに誘われて参加しているらしい。

『大丈夫なん?』

「はい・・・」

静かな返事は戸惑いがある声。

俺は覚えているよ。

河南には悲しくて泣きたいほど傷ついた経験があること。

その同僚と合コンなんて
河南の置かれている位置に
心配になる。

どうせ人数合わせとか
彼女らの趣味に合わない男を河南に押し付けるとか
そんな立ち位置に河南を追いやって
嫌みな事をするためなんやろな。

影口を言う奴らには
俺は容赦せえへんよ?

迎えに行くからと場所を聞き出した。

俺も何度か行ったことのあるその店に入ると
店員にいつもの席へとと案内されたが
今日はカウンターでと返し
店内の雰囲気を見るふりをして
河南の背中を見守る。

河南の妖艶なオーラとは違って
清楚な女性を演じていそうな腹黒な彼女ら。

やっぱり河南が一番いい女だと自賛する。

落ち着きがある河南の方がやはり一枚上手で
媚びる彼女らより男性目線は河南にある。

嫉妬するというよりは逆に
俺が捕らわれた河南だからこそ
結果は分かっている。

いい女とはいるだけでも形になるもの。

気配りの出来る河南には
勝てへんよ。

それなのにそれに気付かない彼女らは哀れやな。
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