隣人(hyde)

エレベーターが止まるという初めての経験が
河南ちゃんを恐怖に追いやった。

俺が河南ちゃんって呼ぶと
河南でいいって言ったじゃないですかと返してくる。

しばらく抱き締めていたら
そう言いながら
笑顔を取り戻した。

河南の笑顔が消えるまで見つめ合う。

「ワイン出しますね」

河南が反らすのを捕まえる。

『ええから』

俺は少し強引に河南の手を引き
腰を抱き直す。

「hydeさん・・・」

俺の気持ち分かってるよね?

そう河南に問いかけた。

言葉なく困り顔もまた魅力的。

「でも・・・」

河南の考えていることなら分かる。

家柄のことやろ?

言ったよな。

河南がどこの誰でも
愛し抜く自信はあるって。

そう説明した上で
河南の気持ちを待った。

「私のこと嫌になったら遠慮しないで振って下さい」

ゆっくりと話す仕草さえ
たまらなく好き。

『嫌いにならないよ』

キスする寸前の距離。

珍しく緊張している河南を感じて頬を撫でる。

河南の手が俺の手に重なる。

「hydeさんの手あたたかい」

さっきまでは恐怖に早くなっていた鼓動が
俺に緊張してる鼓動に変わっていく。

河南の吐息が手にかかるだけで俺も緊張する。

今までにない空気が俺たちを包む。

初めてしっかりとした気持ちで河南を胸に抱く。

今日から俺の恋人。

そう思って初めてのキス。

河南が悪いんやろ。

俺を刺激するから
3度目のキスになったやん。
12/17ページ
スキ