隣人(hyde)

セクシーだけの隣人かと思っていたら
手玉に取るように見透かされてるし
意外な共通の趣味を見つけたり
ますます俺の興味を煽る。

隣人の名前は鳴瀬河南。

先日、鳴瀬さんと名字で呼んだら
河南でいいですと返された。

だから河南ちゃんと呼ぶことにした。

河南ちゃんが隣人だと知ってから何故か
マンションの共用施設でも会うことが多くなった。

今まで会っていたとしても
隣人だと知らなかったから
気付かなかっただけ。

でもこんな女
会っていたら忘れるはずはないと言い切れる。

ジムで汗を流していても
プールで泳いでいても
バーで飲んでいても
ラウンジで仕事をしていても
すぐに俺の視線に入ってくる。

目が合うたびに
俺は手を挙げて合図をするだけなのに
にこやかに会釈して
手を振ってくれる姿にまた刺激される。

仕事帰り
地下駐車場から
エレベーターの上矢印のボタンを押して乗り込む。

一階で止まった箱が扉を開けると
そこには両手に荷物を持った
河南ちゃんが立っていた。

会釈をしながら乗り込んで来る。

降りるのは同じ階。

ボタンを押す必要もなく
俺の隣に並んだ。

女性には決して早いとは言えない
夜も日付が変わるに近い時間。

『こんな時間まで仕事なん?』

自然に声をかけていた。

今日は打ち合わせが長引いて
遅くなっちゃいましたと舌を出す。

河南ちゃんが両手の荷物を持ち直すと
スーパーのらしき袋が
ガサリと鳴る。

重そうだと思い
片方を俺が預かる。

それを嬉しそうに
俺に託す河南ちゃんの笑顔が
今までにないセクシーではない
可愛らしい笑顔だと気付く。

「今夜、春の流星群が見られるってご存知ですか?」

『こと座流星群やろ?』

「明日休みなので夜更かししようと思って」

『俺も明日オフなんよ』

同じ横並びの視線だけで
今から先の予定を
以心伝心のように感じ合った予感がした。

よかったら一緒にいかがですか?と
スーパーの袋を持つ手を掲げる河南ちゃん。
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