初恋(ken)

後日、hydeの事務所から振り込まれた金と
ZIPANGと名付けられた曲と庭園の話題性
YOSHIKIさんと俺の友情出演の話題性
そして何よりも世界のミュージシャン
YOSHIKIさんの圧力で
旅館は買い取られずに済んだ。

「hyde、悪かったな」

お礼を兼ねて俺と河南はhydeのスタジオへ出向いた。

『いいんよ、Kenちゃん』

黒ミサのサプライズバースデーのお礼だと
hydeが言ってくれた。

根回し屋のテツがhydeに話を振ったらしい。

YOSHIKIさんにも宜しく伝えてと話すと
YOSHIKIさんも旅館を気に入ってくれたと
hydeが話してくれた。

予約入れてくれたんだよと河南。

そりゃ、神(hyde)以上やな。

そして更に忙しくなった旅館は
人手が足りなくて度々俺を召喚する。

『Kenちゃん暇だよね?』

いやいや
こう見えて俺、仕事あるんやけど。

ギターの仕事のかたわら
旅館のお手入れをさせられている。

『これお願い』

河南に渡されたのは電球。

はい
やらせて頂きます。

今日も気持ちいい空の下で
俺のかみさんは着物でしとやかに舞っている。

思い出す。

幼い頃の河南のこと。

再会した時のこと。

お見合いから奪還したこと。

プロポーズしたこと。

『Kenちゃん、終わったらこれね』

余韻には浸らせてくれないらしい。

河南の後ろ姿を見て思う。

幸せやな。

よっしゃ
今日の夜は俺が着物を脱がしたるで。

意気揚々と仕事をする俺である。

旅館のフロントには
hydeの被った例の黄金の何かが飾られてある。

「邪魔やな」
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