初恋(ken)

スタッフの声でhydeが来たのが分かる。

頭には何やら黄金の王冠?太陽?
何やの、そのトゲみたいなの。

「まるで仏やな」

『Kenちゃんの身長超せたかな』

hydeがいたずらっぽく笑う。

「五分やな」

『ちっ』

すると静まる空気。
スタッフの緊張が伝わる。

オーラが漂う場所に目を向けると
あり得ない人が歩いて来た。

hydeと二人、緊張した中で挨拶を済ませると
早速、録りが始まった。

YOSHIKIさんのピアノと
俺のギター
hydeの歌。

思わず力み過ぎてギターを鳴かせてしまった。

それもまた景色に馴染むように
すーっと空気に溶けてしまう。

録り終えた映像を見る。

『お前、この世の人間か?』

庭園、照明、衣装、メイク、ギター、ピアノ、歌
すべてが合わさるとhydeとは思えない
美しく麗しく神でも仏でもない誰やねん。

『釈迦やね』

横からhydeがいちいち突っ込んでくる。

久しぶりに気持ちいい会話。

それを横でYOSHIKIさんが笑う。

何や、楽しいな。

俺の衣装を河南が横から引っ張る。

時間があればお風呂と食事出来るけど?

せやな、終わったしくつろいでもらおうか。

じゃあ、俺、先に風呂と言ったhydeと
結局は三人で裸の付き合いをした。

糊の効いた浴衣と
喉を潤すビール。

気の利いたコース料理に
合わせたかのような赤ワイン。

更けた夜は音楽の話で盛り上がった。

河南は全てのスタッフにも仕出しも用意した。

俺の嫁、出来るやろ。

心の中で自慢した。
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