初恋(ken)

手っ取り早いのは個人事務所のテツかhydeやな。

hydeは儲かってそうだけど
詳しそうなのはテツか。

テツに電話してみたら
Kenちゃんから電話なんて珍しいと言われる始末。

色々な噂もあったしな
悪かったな、疎遠でとおちゃらけるつもりが
頭ん中ぐちゃぐちゃ過ぎて
キレッキレの下ネタも口から出ない。

要は河南ちゃんの旅館に
多額の収入があればいいんとちゃう?

かと言ったって営利目的で一回にポンと入るのは
難しいけどなって後付けされた。

アドバイスはもらった。

しかし肝心の収入の目処がない。

しばらく色々考えてみたが駄案ばかりで
何一つ浮かばない。

着物からラフなワンピースに着替えた
風呂上がりの河南を抱き締める。

「悪いな、役に立たない旦那で」

力不足で・・・

すると河南は誰が役に立たないのかと
強く反論してきた。

『いつだって側にいて
助けてくれたのはKenちゃんだよ』

馬鹿なこと言わないでと
今度は小さな口調で言いながら
俺の背中の服をぎゅっと握った。

それは河南が旅館に帰ったあと
何日かしてからだった。

hydeから連絡が来て
急で悪いんやけど代打でギター弾いてもらえへん?
と呼び出された。

打ち合わせスタジオで楽譜をもらって
早めでとお願いされたから
一晩中健気に練習したんやわ、俺。

そしたら今度は河南の旅館に呼び出されたんよ。

明日来てねってhydeに。

まあスケジュールも空いてるからいいけど
ちょっと強引やな。

ため息混じりで旅館に行くと
何や、騒がしい程の人数がいて
お客さんなん?と思わず仲居さんに聞いた。

お客さんとは違うみたいで
何かのスタッフさんらしいですと。

しゃーない、河南、探すかと思ってうろうろしてたら
ケーンちゃんと可愛らしい声がするから
振り返ったら男やった。

「ぬおっ!hydeかいっ!」

悪かったなと満面の笑み。

何や気持ち悪いわ。
12/15ページ
スキ