初恋(ken)

『来週、そっちに行く 』

俺が帰って来てから
そんなに時間は経っていないのに
河南が久しぶりに東京に来る。

そわそわし出すのは俺だけや。

約束の日には時間を空けて河南を迎えに行った。

相変わらずの着物姿が板に付いているし
そんな河南を行き交う人々がチラチラと
気にしているのを
車の運転席から見てニヤついている。

窓から顔を出して河南に合図を送ると
小走りで助手席に乗り込んだ。

『暑いね、こっちは』

着物の襟を触る手元が綺麗だ。

「で?どこまでですか?奥様」

タクシー運転手を思わせる口調でエンジンをかけた。

そして河南と向かったのはそのファンド会社だ。

だけど中には入らず外から様子をみている。

偵察やん。

そう言ったら河南がだって詐欺だったら困るじゃんと
言い返してきた。

確かに、今は多いもんな。

会社の外見も必要っちゅーこんや。

よしっと河南が車のドアに手をかける。

「行くん?」

『うん、アポなしだからどうなるか分からないけど』

Kenちゃんは仕事戻る?

バカ言え、俺も行くわ。

かみさんの一大事を黙って見てることなんか出来るか。

そんな会話が続く。

デカイ会社やな。

そうだね、ちゃんとした会社だね。

受付の姉ちゃんに担当を呼び出してもらうと
河南と面識がある奴が来た。

詐欺ではなさそうだ。

俺にとっちゃこいつらも詐欺みたいなもんやけど。

一通り同じ手はずの内容を聞く。

確かに言ってることに間違いはない。

だけどまだ俺は信用したわけやないし諦めない。

ため息と共に河南と一緒に東京の自宅に戻った。

このまま何もなかったことになればいいのにな。

何度か家族と泊まりに来たことがあるhydeにテツ、
ユッキーもひとりで来たな。

考えてるが答えが見つからないのは
俺の知識不足か?

参ったな。

相談すべきかな。
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