初恋(ken)

続・初恋

「河南の好きなプリン買って帰るわ」

夫婦になって
そう電話越しに話してから二年の年月が経っていた。

俺が河南の元へ帰るときは
必ずプリンを手土産にしている。

相変わらずプリン好きな河南。

東京の有名店のプリン達は河南の笑顔を
いつもよりも輝かしくしてくれる魔法が入っている。

だから俺も帰省する予定が経つと
どこのプリンを買っていくか考える。

いつしかマネージャーも検索してくれるようになり
仕入れておきましたと
俺よりもやることが早くなった。

何故なら俺が帰省するたびに
俺の旅館でもあるここで彼女と温泉に入りたいと
彼女が変わるたびに
今や予約困難な旅館を
コネであっさり半額で宿泊するという荒業で
便乗しているからだ。

抜け目のないやっちゃ。

だからか河南は必ず一部屋は空き部屋にしている。

某有名なサングラスをかけたコメディアンの方も
予約をしてくれる。

俺に。

俺じゃ空き具合すら分からないのに
Kenでいいだろって。

すると河南はいつも俺経由のお客様にと
離れまでを空けてくれる。

そう、離れを一棟、新築した。

さすがは河南だ。

自慢のかみさん。

俺よりも忙しいだろう河南は
俺が帰省すると着物姿にも関わらず
門まで走って迎えにくる。

『Kenちゃん、おかえり!』

癒しの笑顔がたまらない。

「おう」

片手で河南を抱き締める。

そして夕飯時の一仕事を終えてくると
戻ってしまった。

後ろ姿を見送る。

俺は旅館の裏手にある自宅に入ると
プリンを冷蔵庫に入れた。

そして河南が帰るまでの間
ただずっとギターを弾いていた。
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