初恋(ken)

初恋

ーこんな夜は切なくなる。

横なぶりの雨が記憶を戻していた。ー

友人に頼まれて同席した合コンの席で再会した。

同級生だったKenちゃんが上京して10年。

今は大人気のギタリスト。

女子はそれは一番目立つ彼にアピールしていたし
それを見ている私も
彼にアピールしてない雰囲気から
口説かれて
最所は楽しかったけど
話に飲み込まれて席を立った。

彼も同じだったらしく
二人で肩を並べてカウンターに座った。

テレビでは明るくムードメーカーなイメージだけど
実際は割りと静かな紳士。

『久しぶりやん。
元気にしとったん?』

「Kenちゃんこそ、
こんな所にいていいの?」

あのふにゃりとした
猫みたいな顔で
お前に会えたからいいのと
返してくれた。

大好きだった笑顔。

小さい時から
その笑顔に何度も励まされて
元気をもらって
癒してもらった。

ずっと大好きで
小学生の最後に告白したんだ。

そしたら両思いで
浮かれたのもつかの間
中学生で冷やかされて
そのまま終わった。

思春期はお互いを男と女として意識してしまい
小さい頃とは違う関係になってしまった。

けれどいつもKenちゃんは
私を見ていてくれて
気にかけてくれた。

イジメられた時も
Kenちゃんだけが
大丈夫だよって
声をかけて笑ってくれた。

私の初恋の相手。

高校生になると
進学先が別れて離れ離れ。

大学生になり
風邪で薬を買いに行った先の
ドラッグストアで会った。

私は気づかなかったのに
Kenちゃんは私に気付いてくれて
お前はまったくって
大きい手が私のおでこで
熱を計ったんだ。

小さい頃から好きだったプリンと
栄養ドリンクも買ってくれた。

早くよくなれって。

その後もばったり会ったファミレスで
目配せで微笑んでくれた
お互いの恋人に内緒で。

それきり・・・
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