ノイズ(yukihiro)

「何か作るね」

そう立ち上がろうとしたのに
ユキが引き留める。

『俺さ、河南がいないとダメなんだよね』

『河南がしてくれるからつい甘えて』

『いないのは堪えられない』

『ちゃんと傍にいろよ』

喧嘩の原因が何であれ
ユキが久し振りに自分の気持ちを
話してくれたことがすごく嬉しくて
笑顔の私がいた。

長く一緒にいると
喧嘩の原因もすぐに忘れてしまう。

同じことを繰り返しても
愛情の気持ちは変わらないし
いつまでも喧嘩を引きずることもない。

空気みたいな存在とかじゃなくて
自分の一部だから失うと痛いのだ。

ユキが立ってキッチンで何やらガサガサ始めた。

手には二つのカップ麺
同じ味のが並ぶ。

『旨そうだったから買ってみた』

中華風味のそれを二人で一気に食べたんだ。

そして夜も更け込み過ぎて二人でベッドに入る。

私がいつものようにユキに寄り添うと
ユキはいつもよりもきつく抱き締めてくれた。

『探した』

ユキが話す単語ばかりの会話が好き。

『いなくなったらどうしようかと思った』

「いなくならないよ、ユキの傍にいるもん」

『見つからないとさ、焦るじゃん』

『お前に何かあったら俺・・・』

「じゃあ常にユキにくっついてないとだね」

そう言って足もユキに絡ませた。

抱き枕みたいにコアラみたいにしがみついてみた。

『寝にくい(笑)』

「だよね(笑)」

ユキの温かさに眠気が降りてくる。

「おやすみなさい」

ユキが頭を撫でてくれたんだ。

滅多にしないのに。

『心配かけんなよ』

ユキが探しに出てくれたのは分かっていた。

きっとコンビニの中も探してくれたんだね。

それで色々買ってみたのかな。

ユキなりのお詫びのしるしみたいな。

公園も探したのにって言ったのも
本当は聞こえていた。

すぐ側まで来ていたのに
神様に意地悪されちゃったみたい。

そう思うとユキなしでは生きていけないのを実感する。

「心配かけてごめんね」

そのまま夢の中へ旅立った。

ー終わりー
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