ノイズ(yukihiro)

うとうとしてどのくらい経ったのかは分からない。

肌寒さに目が覚める。

いつまでも意地を張っていてはいけないんだろうな。

やっぱり帰ろう。

悔しいけど
ユキはきっと部屋でゲームでもしているのだろう。

いちいちこんなことに付き合えるほど
暇じゃないだろうしな。

なに食わぬ顔して帰ればいいや
そう思ったけどなかなか入れないマンションの前。

見上げればユキの部屋の明かりが付いている。

鍵もないからオートロックも開かない。

怒ってるかな・・・

インターホンも押せなくて右往左往していると
急に自動ドアが開いた。

『おかえり』

そう言ったのは誰でもないユキだった。

目が合わせられなくて反らした。

ドアを挟んだユキ側と私側。

ユキの手が私の手をつかんで
同じフロアに立たされる。

『どこにいたの?』

ユキの低い声が脳裏に響く。

「公・・・園」

チッとユキの舌打ち。

『そこも探したのに』

ボソリと聞こえるか聞こえないかの声量。

手は繋いだままエレベーターに乗る。

『窓から見えたから、お前来たの』

部屋に着くなりバスルームに入れられた。

『風呂、溜まってる』

お気に入りの入浴剤の香り。

浴槽に浮かぶひよこ隊長に思わず笑みがこぼれた。

ユキなりの優しさが見えて
泣きながら髪を洗った。

冷えきった体が温まる
気持ちにも余裕が出てきた。

濡れた髪をタオルで包みながら
キッチンで冷蔵庫を開け
ミネラルウォーターを探す。

見覚えのない品物が冷蔵庫に並べられている。

コンビニスイーツが数点に
缶酎ハイが数点。

ユキの喉には通らないそれらは
私のために?

振り返ってリビングに座るユキを見れば
私に背中を見せてゲームをしている。

私はその中にあるスイーツのひとつを持って
ユキと背中を合わせた。

「いただきます」

口に広がる甘い香り。

味わうと胃から催促。

お腹が空いていたせいも手伝って
一気に食べ干してしまった。

「ごちそうさまでした・・・」

するとユキが口を開いた。

『腹、減らね?』

私も思っていた。
14/15ページ
スキ