ノイズ(yukihiro)

勢いよく迫られる。

「きゃあ!」

男の力には勝てない。

『河南?おい!』

電話は勢いで床に落ちて
通話中のまま
手の届かない所で
ユキの声が聞こえている。

「やだ!離して!」

両手を捕まれ
首もとを舐められる。

「いやぁ!」

かつて愛した彼だけど
こんなの違う。

彼じゃない。

初めて恐いと思った。

「ユキ!」

助けてと言いかけて止めた。

彼との間にユキを入れたくないのと
これを見られなくないのと
色々な気持ちに格闘があった。

《あいつのことは許すから》

無我夢中で抵抗しながらも
彼の言葉を聞いた。

「許されなくていい」

《なぁ、戻ってこいよ》

更に強くなる彼の力。

「痛い。離して!」

ごめんなさい。

泣きながら
その言葉ばかりを繰り返した。

今、この状況から解放されるなら何度も言う。

「もう戻らない。ユキじゃないと駄目なの」

ごめんなさい。
ごめんなさい。

痛みがなくなった体は
ただ震えるだけ。

ストッキングは伝線し
胸元ははだけたまま
私はベッドの隅で膝を抱えた。

謝り続けたら
我に帰ったのか
ふらついたまま彼は帰って行った。
11/15ページ
スキ