ノイズ(yukihiro)

彼に別れをお願いした。

理由を求められて
他に好きな人が出来たと伝えた。

そいつに会ってから考える。

そう言われてしまった。

会わせられないと言ったら
別れないと言われた。

《あのクラブで会ってるの知ってるから》

バレている。

この間会ったのは偶然だったけどその後。

確かにキスの後は
ユキと何度か会った。

会っただけ。

それを知られてしまっていた。

このままではユキに会えないと焦る。

鞄の中からメールを知らせる音。

「やめて!」

彼が鞄の中の携帯を出す。

携帯を操作されて
クラブに連れて行かれた。

行きたくないなんて
拒否権は私にはない。

スーツ姿の彼が
合わないはずのクラブのドアを開ける。

爆音と人でごったがえすフロアには目もくれず
彼に腕を取られたまま
VIPルームを目指す。

居ないでと何度心で願ったか分からない。

それは虚しくも届かない。

そこには携帯を片手にしているユキの姿と
私の携帯を片手にしている彼。

《約束は守るんだな》

『動くなと言われたからね』

受信履歴にはユキから
今日はいるからと
送信履歴には
そこを動くなよと彼が。

相手がラルクのyukihiroだと知っても怯まない彼に
申し訳ない気持ちが込み上げる。

《お前、確かhyde好きだったよな?
だからyukihiroに近づいたんだろ?》

「違う・・・」

《yukihiroと仲良くなれば
hydeに会えると思って来たんだよな》

「違う!」

握られたままの手首と
ユキに聞かれたくない言葉たちが痛い。

私の我が儘だけど
ユキへの気持ちはもう止められない。

こんな状況にユキの顔をまともに見られなくて涙が出る。

『泣かすなよ』

ユキの低い声。

《芸能人って格好いいよな。
俺は嫌いだけど》

こいつは俺の女だからと
吐き捨てて
また彼に引っ張られるようにして帰宅した。
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