ノイズ(yukihiro)

約束の日には
yukihiroさんが先に来ていた。

「こんばんわ」

1つ空けて
yukihiroさんとは隣の隣。

『何それ』

苦笑いされる。

「隣はまずいじゃないですか?」

彼女さんがいるかと思うと
隣はいけないような。

つい辺りを見回してしまう。

『彼女はいないから』

え?

そうなんだ・・・

てっきり
あのモデル風の女性が彼女かと思っていた。

じゃあ私は・・・

場所を変えようと
ドリンクを持って
店内よりも少し静かな部屋へ行った。

『こーゆー場所は苦手?』

「踊りは恥ずかしくて苦手です」

あなたとの会話も苦手。

汗をかくほど
張り裂けそうなほど
言葉が出ないほど緊張する。

こんなにも恋をしたのは
初めてかもしれない。

彼氏がいるのに
その彼の気持ちを裏切ろうとしていることがまた
気持ちを高ぶらせている。

お手洗いへ行くと出たVIPルームから先に彼の姿。

同時に楽しい時間は
現実に戻される。

唾を飲むほどに驚いたのは
いうまでもない。

慌てて引き返して扉を閉めた。

『どうしたの?』

yukihiroさんの不思議そうな顔。

「彼が・・・」

言葉に詰まる。

『彼氏?』

パニックになりかけて頷くだけの私。

ドアノブに掛かったままの手を
yukihiroさんがそっと握ってくれる。

『大丈夫。自然にして』

深呼吸をするように
背中をさすってくれた。
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