ノイズ(yukihiro)


目の前で
あなたを
不覚にも好きになってしまった。

私、彼氏いるのに。

友達に連れられて
クラブに来た。

踊れない私は
カウンターの隅。

踊ることよりも
DJの機械に興味が湧いた。

でも呑むしか出来ない。

普通すぎるダンスチューンが
私には合わない。

これで踊るのが
今の流行りなのかと思うと
パラパラやジュリアナの時代の方が
個性があると思わざるを得ない。

「つまらない音楽」

ぼそりと放った言葉に反応した
そこに現れた無愛想な彼。
yukihiroさんだ。

あのラルクのyukihiro。

残念ながら私はhydeファン。

だけどどうしても視線が離せなかった。

想像以上にかっこいい。

だけど呑む手は止まらない。

『普通すぎる?』

いきなり声を掛けられて
どうしていいか分からなくて
視線を外して頷く。

するとyukihiroさんがDJブースに立った。

今までとは比べ物にならないダンスチューン。

ノイズの効いた
インダストリアルミュージックが
クラブのダンスナンバーになるなんて。

目が離せなかった。

yukihiroさんがカウンターに戻ってくるなり言った。

『いいでしょ?』

その笑顔に虜になってしまった。

「すごく良かった」

あなたは誰もが羨む
天高いアーティストなのに
私と話している。

スタイルのいい
モデル風の女性が
yukihiroさんに絡んできた。

彼女かな。

そう思うと
今までのテンションが下がる。

私は会釈をして立ち去った。
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