MEMORIES(hyde)

ー河南sideー

アゲハが何度も言う。

スクリーンを見ては
あの人は河南の大事な人だって。

さっきははじめましてと挨拶をしたが
スクリーンで見ているせいなのか
昔ファンだったからなのか
はじめましてじゃないような
不思議な感覚を覚えた。

握手をした時に
何かを忘れていると
本能的に悟った。

撃たれてから
ずっと夢を見ていた。

暗闇から聞こえる
私を呼ぶ声。

光りの方に走って
差し出された手をとると
顔が見えそうなのに
そこで目を覚ましたら
心がぽっかりとしていた。

何で撃たれたのかさえ覚えていない。

アゲハが一生懸命に話してくれるけど
ちっとも頭に入らなくて
何だっけとおどけるだけ。

『お願いやから忘れんとって』

何故、あなたは泣くの?

hydeさんの綺麗な涙を
自然と拭う。

「泣かないで」

前にも言ったセリフ。

誰にだっけ。

何でだっけ。

私の手を握ったまま
hydeさんはずっと泣いていた。

私の手をずっと握っては駄目。

あなたまで汚れてしまう。

それでもあなたは手を離さない。

どうして?

あなたがここに来てから
波のような心。

何故か苦しい。
11/13ページ
スキ