MEMORIES(hyde)

長期のオフ。

現地のコーディネーターや
SPを従えて
この地に足を踏み入れるのは
あれから二年が経っていた。

出迎えてくれたアゲハは
すっかり大人の女性になっていて
うっかり見とれてしまった。

《ありがとう。
hydeのおかげで村が出来た》

アゲハはさっそくhydeを
河南がいる学校に案内した。

河南は俺を思い出してくれるだろうか。

不安ばかりが募る。

《河南、hydeが来た》

「hyde?」

やはり顔を見ただけでは
思い出さないのか。

俺は笑顔を向けたが
はじめましてと返された。

アゲハが河南はhydeと会ったことがあると説明したが
昔はファンだったから緊張すると
いつもライブを見てるから
不思議な気分だと話している。

食い下がらないアゲハを止めた。

無理に思い出さなくていい。

思い出したらきっとまた
河南の心が壊れてしまうような気がした。

それでもどこかで期待をしてしまう。

だからまた河南の部屋を訪ねた。

『たまにはどうかな』

あの時と同じビールを差し出す。

口つける河南を見て
やはり愛しいと思う。

変わらないロウソクの炎が
揺らめいている。

「時々思うの。
何かを忘れてるって」

いきなり話はじめた河南に
驚く俺。
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