MEMORIES(hyde)

ーhyde sideー

あの三日間は
夢物語だったのだと言い聞かせている。

俺はVAMPSとして
世界を回りながら
その収益で
あの難民キャンプに
寄付を続けている。

それが今は
学校になり
子供たちの給食になり
自給できる環境が整い
一つの村として大きくなった。

スクリーンでは俺たちのライブも見られる。

河南が言う通り
音楽は世界に分かちあえるんだと
思い知らされた。

ライブのDVDを送るたびに
アゲハから手紙が届く。

俺はあれから河南に会っていない。

俺たちをかばって倒れた河南が
あれからどうなったかは
手紙に記されたアゲハの言葉だけが頼り。

河南のおかげで
すぐに助けがきて、
河南の安否を知らされないまま帰国した。

アゲハから手紙が届いたのは
スクリーンが設置されるようになった一年後だった。

河南はまだ目覚めていない。

正確に言えば
一命を取り止めたものの
一ヶ月間眠ったままののち
意識を取り戻したら
三日間の記憶が欠けていた。

アゲハがhydeを教えても
河南の中では
日本のアーティストのまま。

河南は学校で簡単な算数や日本語を教えている。

時々何かを思い出すように
遠くの空を見上げているらしい。

たぶん俺の記憶がなくても
河南が罪として背負っている
あのことを思い出しているのだろう。

何度か日本に帰るように言ったアゲハの言葉は
河南の優しい笑顔に
かき消されたと書いてある。

手紙の最後には
hydeがいれば
河南はhydeのことを思い出すのかなと
毎回書かれているアゲハの願い。
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