MEMORIES(hyde)

忘れ物を届けに来た河南は
アゲハがhydeに話しているのを聞いてしまった。

両手で口を抑え絶望している。

アゲハが部屋を出ていくのを
柱の影に隠れて見送り
河南は部屋のドアをノックした。

『誰?』

「河南です」

ドアを開けようとしたhydeの手が止まった。

「開けないで聞いて」

察しているであろう河南の声は弱々しかった。

「アゲハから聞いたでしょう?」

そして続いた。

忘れ物を届けに来ただけだから、
ここに置いておきますと。

「明日はいい画が撮れるといいですね」

外は急なスコールが降りだした。

この地は滅多に雨が降ることはないと聞いていた。

俺は河南の心が降らせたのだと思い
走って去って行った河南を追った。

川沿いに佇む河南は
川に入り乱暴に体を洗い始めた。

悲鳴のように泣きながら。

河南の側にはいられないと
自分自身が大事だと
一瞬でも思った俺自身を
撃ち殺したくなった。

悲鳴を叫んでいるのは河南。

深い傷を追っているのも河南。

俺じゃない。

『やめろ!』

「離して!」

『河南!』

「汚いから触らないで!」

俺は夢中で河南を抱き締めていた。

今まで生きてきて
こんな一瞬で人を愛したことはない。

泣き叫ぶ河南を
雨に打たれて
ただ抱き締めることしか出来なかった。

どのくらい泣いていただろう。

河南も俺も。

汚いから・・・

その言葉は
河南には似合わない。
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