MEMORIES(hyde)

ーhyde sideー

自分の部屋に戻ってから
河南のことが離れなかった。

初めて見た時は
子供たちに囲まれながらの笑顔が
女神みたいに美しかった。

朝の顔は
凛々しいジャンヌダルクの裏に
鬼が潜んでいるようだった。

さっきは
紛れもなく癒しのマリアのような
河南だった。

考えてる最中に
ドアがノックされた。

そこには河南が気にかけて
この地に来た理由の
アゲハがいた。

まだ幼さが残るアゲハを
部屋に入れた。

《河南は汚い女だから
あなたにはふさわしくない》

片言の日本語。

『汚い?』

俺は聞き返した。

河南がこの地に来てからすぐのこと。

衝撃の事件を聞いてしまった。

欲に耐えかねた数人の男。

襲われそうになったアゲハを助けるために
自分が犠牲になった。

一日帰って来なかった河南が
翌朝、ずぶ濡れになり
ボロボロになって帰ってきた。

何があったかは聞かなかったが
破れた服
その服には返り血と
火薬の臭いが付いていた。

それはアゲハが襲われた場所には
数人の銃で撃たれた死体。

hydeは悟った。

河南の身に起きたことを。

『何で俺にそんなこと!』

絶句して
怒りをあらわにしたhydeが
アゲハに怒鳴った。

《あなたが河南を愛しているから》

愛・・・してる?

まだ会って一日しか経っていないのに?

ここに来てからずっと
あなたは河南を見ていたでしょう?

私も河南を見ているから分かるの。

河南もあなたに惹かれている。

だから河南は渡さない。

そうアゲハが言い放つ。

確かに俺は河南に惹かれていた。

だけどもしこれが事実なら
俺は河南の側にはいられない。
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