MEMORIES(hyde)

ここはとある難民キャンプ。

私がここに移住してから2年が経つ。

ボランティアで知り合った女の子が
戦争に巻き込まれ
この難民キャンプに移ることになったのを機に
周囲の反対を押し切って
数名の同じ思いを抱える知人と来た。

今、目の前で
2年ぶりとなる日本人と話をしている。

2年前はファンだった
L'Arc~en~Cielのhydeが
VAMPSとして
MV撮影の為にここにいるのだ。

本物を前に
信じられない気持ちと
興奮する気持ちが交差する。

しかし
うっとりしている場合ではない。

いつ何があってもおかしくないこの場所で
神経を尖らせなくてはならない。

けれど
罪のない子供たちの為に
少しの癒しになればと
見学させてもらっている。

一番に目を輝かせているのは
私が知り合った女の子。

《アゲハ》

彼女は難民キャンプに入る前は
ネットで色々な国について勉強していたから
もちろん
日本のアーティストにも
興味津々。

《あの人たちは誰?》

アゲハが私に質問する。

「日本の有名なミュージシャンよ」

慣れた外国語で
VAMPSを説明する。

《私は真ん中の歌っている人が素敵だと思うわ》

「hydeさんね。私も彼が一番好きよ」

《じゃあライバルね》

アゲハの澄みきった瞳に
hydeさんが映る。

日本人の私がいることで
何かと頼られてしまって
行動を共にすることになった。

私が手伝うことで
この場所に少しでも
明るさを取り戻せるなら
世界に目を向けてもらえるならと
協力することにした。

『よろしく』
「河南です。
よろしくお願いします」

握手を交わす私達を
アゲハは睨むように見ていた。
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