僕の彼女シリーズ(ALL)

いつも起きる時間に等しく
体内時計は狂いないようだ。

hydeは?
病室にはいなかった。
帰ったのかな。

お店、どうしようか。
皆に休みの連絡しなくちゃ。

パン屋の朝は早い。
そして開店も早い。

だからこそもう皆に連絡とらなくちゃ。

そう思ってスマホを取り出したら
hydeからメッセージが入っていた。

面会時間が終わったから帰るな、
また来るから。
店は休むように言ってあると。

他にも皆からお店は心配しないようにと
メッセージが入っていた。

1日は検査ばかりですぐに時間が経つ。
横になれるのが少ないくらいだ。

疲れた体をベッドに沈める。

するとノックされるドア。

hydeが来たのかと思ったら
病室に来たのはてっちゃん。

てっちゃんが持ってきた袋から
甘い香りが病室に広がる。
思わず深呼吸したくなるほどの香りには
甘酸っぱい香りも混ざる。

食べられないと分かっていても
見た目でいいから判断して欲しいと
美鈴ちゃんから頼まれて来たと。

美鈴ちゃんはユッキーから連絡をうけてすぐに
試作品を作ったそう。
マフィンにスコーンにドーナツ。
ミートパイやエッグタルトにカヌレ。
パンに近い試作品ばかりが病室に並ぶ。

河南の仕事を引き継ぐように店にいるから
ユッキーに頼んだけど
七瀬が今日はてっちゃんが暇してるはずだから
たまにはメンバーにばかり根回ししてないで
河南さんのところに行ってきてと
七瀬に言われたと笑っていた。

てっちゃんが帰ってすぐに
麻帆ちゃんが飛び込んで来た。

病院にこれはダメかもしれないけどと
こっそり出したのは
甘くてスパイシーな香りがする容器。

えっ?Kenちゃんが?

そうなんです!
カレーでいいんちゃう?って
たまたまお昼にカレーだったんですけど
麻帆のカレー旨いからって
と照れた様子で興奮気味に話す麻帆ちゃん。

すぐに七瀬さんと美鈴さんに連絡したら
隠し味はチョコレートとコーヒーに決まりだって
夜には完成しましたと。

検温のため、来た看護師さんが
いい匂いだねなんて言う。

ここのパン美味しいんだよね!って
紙袋を指しながら続けて言うから
試作品だから味を聞かせて欲しいと
逆に頼んでしまった。

更に私がパン職人だと驚かれてしまった。

1日だけしかなかったのに
店主のパンがお休みしてる間だけの限定で
ショコラティエのパン。
そしてウェイトレスとバリスタのカレーランチが
登場して
1日だけの臨時休業から再開した店は
変わらない人気で忙しくしている。

カレーのおかげで一週間経ったころには
男性客も増えたと報告をもらった。

閉店時間になるとあいつらが来て
ユッキーがレジ閉め
Kenちゃんがフロア掃除して
てっちゃんが在庫管理してるんよ。

hydeが隣で笑っている。

ありがたいね。
涙する私の顔をあの垂れた瞳で見る。

『今までお前が頑張ってきたからな』

頭をぽんとされて
その言葉に幸せを感じる。

いつだってそう。
hydeはちゃんと見ていてくれる。
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