僕の彼女シリーズ(ALL)

定休日は月曜日 ラルクver



今日は月曜日。
カフェの定休日。

定休日のカフェの二階には
充電期間中の彼氏たちの面々が揃った。

tetsuyaが言う。

『こうなったのもhydeと河南ちゃんのおかげやな』

こうなったのも・・・
hydeが嘆く。

何でこんなことになるん?

河南・美鈴ちゃん・七瀬ちゃん・麻帆ちゃん

俺・ユッキー・てっちゃん・Kenちゃん。

パン屋の四人とラルクの四人
それぞれが恋人同士なんてとため息が出る。

まあいいじゃない、楽しそうだよ
そう河南がなだめてくれる。

『てっちゃん、よく言うわ』

さらにため息をつき続けるhyde。

元々は俺と河南の
大事な大事な愛の巣やったんにと
落胆の表情を見せる。

ユッキーは改装費を出してくれたんやし
けど、てっちゃんとけんちゃんは完全に後付けやん。

hydeはじろっと二人を見る。

そこに河南がパンとチョコ
コーヒーとコーラを持って二階に上がってきた。

「いいじゃん、楽しくて」

普段とは打って変わって静かな店内に
響く俺たちと河南の声。

おのおのに手に取るそれは
それぞれにお気に入りの品々。

それはやがて
コーヒーからワインに変わり
オリーブ入りのパンや
カカオ多めのチョコなどの酒の肴に変わり
時間が過ぎて行く。

『ええやん、なあ、Kenちゃん』

tetsuyaの言葉を聞いてるのか否か
分からないくらいの愛想笑いを見せるKen。

それを見て更に落胆するhydeと
河南の笑い声が響き続ける。

ただ一人ポーカーフェイスなyukihiroは
携帯でメールを打つばかりで
会話には参加していない。

yukihiroの彼女、七瀬が顔を出す。

「ごめんなさい、遅くなって」

待っていたかのようでyukihiroは
美鈴と一緒に隣の部屋に消えた。

『ええなぁ』

またtetsuyaの声が響く。

『てっちゃん、帰ればええやん』

『いやや、hydeばかりにいい思いはさせへんで』

hydeとtetsuyaのやりとりを笑いながら
会話しているのはKenと河南。

「Kenちゃんは?麻帆ちゃん来ないの?」

『定休日くらいゆっくりしたいやろ』

俺、仕事やゆうてきたしと
大人らしい答えのKenに河南は言う。

「我慢?」

『うっさいわ』

Kenちゃんらしいと
結局お見通しなのは河南。

tetsuyaがええなぁと連呼するには訳がある。

tetsuyaの彼女の七瀬は
国産のコーヒー豆を求めて沖縄に行っているからだ。

かと言ったって明日には帰ってくる。

「私は助かってるんだけどね」

七瀬には一流バリスタになる腕がある。

最近は若い女性だけじゃなく
紳士も増えて
コーヒーの売上が伸びている。

だけど今、目の前に七瀬がいないことに
うなだれているtetsuyaが河南に寄り添う。

『淋しいわ・・・』

よしよししてあげる河南。

『てっちゃん、河南にひっつかんといて』

hydeが引き剥がすとソファーに倒れるtetsuya。

『仕方ねーな、俺の膝貸してやるよ』

てっちゃーんと女になりきるKenに

『Kenちゃんキモい』

とtetsuyaが言い放つ。

笑いの堪えないパン屋の二階。

「よし!今日は呑もう」

二本目のワインボトルをhydeに渡す河南。

受け取ったhydeは躊躇なく開ける。

阿吽の呼吸なのである。

飲み初めて30分ほど経つと
タンタンタンと階段を昇る音。

『お前』

声を出したのはKen。

両手いっぱいの荷物を抱えてきたのは麻帆。

「Kenちゃん、ちゃんと言ってよね!」

私だけ除け者にしないでと怒っている。

『すまん』

そう言いながら顔はにこやかなKen。

つまみを買ってきてと河南が連絡していた。

河南がyukihiroと美鈴も呼んで
ワイワイと宴を楽しんでいた。

しばらくすると寝息が聞こえる。

hydeの膝に河南の寝顔。

パン屋の朝は誰よりも早い。

hydeたちが寝る頃にはもう働いている。

目を細くして河南の髪を愛しそうに撫でるhyde。

それを見て目を細くする面々。

手際よく麻帆が片付け初めて
美鈴が一階を取り仕切る。

早々に綺麗になった二階から
hydeと河南以外がいなくなる。

hydeは河南をベッドへ運ぶとおでこにキスをする。

『おやすみ』

河南の寝顔を見ていたhydeもまた眠くなり
同じベッドの河南の横になだれ込む。

いつしかぶりの熟睡。

夢見心地のまま
横にいた河南の姿がないことに気づく。

あぁ起きたんやなとhydeは
夢と現実の狭間にある空間に身を寄せる。

しばらくすると焼きたてのパンの匂いが
部屋まで届く。

そして聞き慣れた名前たちが飛び交い
彼女たちの声が笑い声と共に重なり合う。

眠りの中でも幸せを噛み締める。

昼過ぎ、支度をして階段を下れば
糖質オフのパンとサラダが用意されてある。

昨日仕入れた沖縄の国産珈琲が
ポットに入れられ
そのランチバッグを持つと
いってらっしゃいと河南のキス。

定休日の月曜日の翌日は
だいたいこのパターンでスタジオに入る。

そこはhydeのスタジオの向かいにあるパン屋。

もちろん取材はお断り。

yukihiroが来れば自然とチョコレートを口に頬張る。

tetsuyaが来れば自然と珈琲を飲んでいる。

『てっちゃん、それ昨日の沖縄のやって』

hydeが声を掛ければ
tetsuyaは余韻に浸る。

『やっぱりええわ』

そうして音合わせが始まる。

狂いないいつもの音に
スタジオの窓から見えるいつもの店。

離れていた分の安心が深まる。

パリに河南を迎えに行く前からもう
こうなることは必然だった。

そしてまた定休日に集まる。

『たまには二人にしてや』

hydeの遠吠えが満月に響くのであった。
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