レーズンバター(hyde)

またいつものように
お互いの仕事を尊重させた日々を送る二人。

河南の誕生日。

河南としては
hydeに祝って貰えたら嬉しい気持ちもあるが
誕生日だからと言って
hydeにねだったりするわけでもなく
特に予定も入れなかった。

考えてみれば、去年の誕生日は
hydeと付き合うすぐ前だった。

もうhydeの隣にいられるようになってから一年が経つ。

誕生日だってことも教えた記憶はない。

hydeの誕生日はツアー中だったから
帰ってきてからサングラスをプレゼントして
ワイングラスを鳴らした。

仕事の昼休みにhydeからメールが入ってきた。

今日は早く終わるから
久しぶりに二人でOWLへ行こうと。

河南は私も定時に終わらせて帰りますと返信をした。

定時刻、外に出た河南を待っていたのは
知っているファンも多い有名なhydeの愛車。

寄りかかって煙草を吹かしているhydeの姿。

行き交う人々が一瞬でも視線を向ける。

駆け寄る河南に対して
hydeは助手席のドアを開けてエスコートした。

hydeは運転席に座ると
突然、優しいキスを落として河南の耳で囁いた。

「お誕生日おめでとう」

そう言って
抱えきれないほどの真っ赤な薔薇の花束を河南に差し出した。

驚いて声も出ない河南。

「どうして?」

出会った頃の他愛もない会話で出たのを覚えていたhyde。

生まれて初めて貰った薔薇の花は河南の年の数。

まるで自分がお姫様にでもなったかのような錯覚に陥る。

薔薇の香りが幻想に誘い
それだけで酔いしれてしまう。

hydeの時と同じにワイングラスを鳴らす。

河南の生まれ年のワインは、繊細で包み込むような
それでいて絡みつく甘口のワイン。

それに合うマスターの料理と隣には大切な人。

ゆっくりと贅沢な時間が流れた。

手を繋いでhydeの部屋へ帰る。

ソファーに座るとhydeに寄り添う河南。

「今日はありがとう」

素直な気持ちを伝えた。

するとhydeが河南を抱き返して言った。

「結婚しよう」

時が止まったかのように
河南の表情が固まった。

そしてゆっくりと微笑んで言った。

「よろしくお願いします」

hydeは河南の薬指に指輪をプレゼントして、そこにキスした。
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