レーズンバター(hyde)

何かの匂いにつられたように起きたhydeは
そのまま台所に向かう。

鍋の蓋を開けるのと同時に久しぶりの空腹を感じた。

見渡すとリビングのソファーで眠る河南を見つけた。

愛おしい姿に目を奪われる。

河南に毛布をかけて浴室に入ると
河南がお気に入りの入浴剤の香りがした。

癒されて何もかもが洗い流されたかのように体が軽い。

リビングに向かうと河南の姿が見えなくなっていた。

「ご飯食べられる?」

後ろからする河南の声。

その手には温められた味噌汁がのったお盆。

テーブルにはhydeが好きな和食が並べられていた。

河南の愛がhydeを支えているのだと改めて気付く。

「おいしい?」

何も聞かずに他愛もない会話と笑顔を向けてくれた河南に
hydeは酷く心が痛んだ。

食後の珈琲は染みた。

hydeは片付けている河南の後ろから抱きしめた。

手を止めてhydeの腕を引き寄せる河南。

「ごめん…」

一時は気持ちが離れそうになった河南だったが
あの夜のhydeとのキスで
自分の気持ちから
hydeへの愛はまだ消えていないことを感じていた。

だからなのか
謝られたりしたら
責めたくなってしまうのを堪えた。

その気持ちを震える河南からhydeも悟った。

hydeの腕に落ちる涙。

更に包み込むhyde。

「寂しかったんだよ」

泣きじゃくる河南を
hydeは自分に向かせて抱きしめ直した。

「ごめん」

「hydeさんのバカ」

出会った頃の涙も
あの夜の涙も声を殺していたのに
今は子どものように
声を出して泣いている河南にhydeは謝るしかなかった。

色々な葛藤の中で
再び繋ぎ直せた二人の絆。
34/37ページ
スキ