レーズンバター(hyde)

数日後
河南は会社の飲み会に参加していた。

慣れないサワーばかりを飲んで酔いが回ってしまって
外の空気を吸いたくて
同僚に断って外に出ようとしたら
入ってきた男性とぶつかってしまった。

顔を見上げるとhydeがいた。

声が出ないでいる。

「謝りなさいよ」

例の歌手がhydeの腕に手を回しながら言った。

「すみませんでした」

やっとの思いで声を出し
会釈して
hydeの横を通り過ぎた。

サングラスをして
帽子を深くかぶっていても
それがhydeだと河南には分かってしまう。

うまく出来なかった呼吸を整えるように空気を深く吸った瞬間だった。

河南は誰かに腕を引っ張られて
店の隣の路地裏に連れて行かれた。

両手を塞がれ
激しいキスに息が出来ない。

逃げるより受け入れている。

コロンのその香りで
hydeが相手だって分かっているから。

涙が流れているのさえ忘れて夢中になる。

欲しくてたまらなかった物を手に入れたように
hydeの力も強くなる。

唇が離れ荒い息づかいの二人。

hydeはそっと河南の涙を拭うと
優しいキスを落とした。

「愛してる」

サングラスをかけながら
戻るhydeの後ろ姿。

その場に残された河南は
hydeのやり方にズルイとさえ思った。
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