レーズンバター(hyde)

噂も消えかけた頃
hydeの新曲に合わせた
ステージ衣装のデザインを頼まれた河南。

休日を利用して
スタジオで新曲をレコーディングしているhydeと同じ部屋の片隅で
イメージを膨らませていた。

そこへhydeが楽曲提供を頼まれた歌手が挨拶をしに来た。

「ちょっとそこどいてくださる?」

河南を見下すその姿は
ヒヤリとするほどに冷たい視線。

「すみません」

慌てて広がっていた資料を集めて立ち上がる。

珈琲を要求され
スタッフに聞いて差し出す。

居場所を見つけられずに
ブース内にいるhydeに気づかれずにスタジオの外に出た。

自販機横のソファーに腰かけてため息をつく。

出来上がったデザイン画は
行き合ったメンバーに渡した。

そのまま更に外へ出て
帰宅する意思もなく
hydeに黙って出てきてしまったことを後悔しながらも
街を彷徨い始めた。

意味もなく宛もなく
上の空でウィンドウショッピングをする。

夜のネオンに染まる頃
信号待ちの交差点で
聞き覚えのある独特のエンジン音。

目の前をhydeの車が通りすぎる。

助手席にはさっきの歌手。

その夜
hydeは部屋に帰らなかった。
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