チョコレート症候群(hyde)

あの人には奥さんがいる。

それを分かっていて好きになってしまった。

苦しくて
何度も諦めようとしたのに
あなたを見るたびに
やっぱり好きなのだと
自分の気持ちに気づいてしまう。

年末になると忙しくなる。

私は音楽事務所で事務を
もう何年もしている。

普段はあまり所属アーティストと話すことはない。

12月のクリスマスが終わり
年が明けると
hydeさんへの
誕生日の贈り物が
早々と事務所に到着する。

毎日、宅配便の中身を確認する作業が
普段の仕事の上に重なり
残業が多くなる。

残業をするイコール
奥さんがいるあの人と会う回数が増えてしまう。

あの人とはhydeさんのマネージメントをしている彼である。

あまり会わないからこそ
会った時には自然に振る舞えるのに
頻繁に会うと緊張して
自然に笑うことさえ出来なくなってしまう。

事務所主催で行われる
hydeさんのバースデーパーティ。

今年はギターの形をしたケーキを用意した。

たくさん呑んで
たくさん笑って
そのケーキを撮影するhydeさんの
その横にいる彼を睨む。

さっき携帯に来た
この後、行かない?と
メッセージ。

どこに?
と突っ込みたくなる内容。

分かっている。

男女が酔って行く所は
体を合わせる場所。

でも私は一線を越えることはしなかった。

奥さんがいる彼に抱かれても嬉しくない。

奥さんと行って下さいと
にこやかな絵文字を加えて
返信をするも
私の気持ちを知ってか
知らずか
悪のりしてくる彼が許せなくて睨んだのだ。

誘われることは
過去にも何度かあった。

そのたびに
冗談っぽくあしらっていたのに。

恨めしい中に
期待があるのが
私自身も許せない。

何故、あなたを好きになってしまったのか。

その悪ふざけでも
憎めない
私の好みの顔をしている。

出会った時から
キュンとしてしまった。

漫画に出てくるような
壁ドンが似合うあの顔。

隣にhydeさんがいて
目の中が贅沢な画になっているのは確か。

会計係りの私は
連日の残業で疲れていたせいか
アルコールと眠気の狭間で
戦っていた。

お手洗いから帰ってきたhydeさんを見上げると
ふらふらした頭が悲鳴を上げた。

やばいと思うのと同時に
倒れかかった。

ちょうど立っていたhydeさんが支えてくれて
大丈夫だから
そう言って座敷にあぐらをかいたその足を枕に
いつの間にか眠ってしまった私がいた。
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