一章(とりあえず完)
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くらい、くらい
まるで深い海の中にいるようだった。
ゆらゆら、ゆらゆら
揺れている。
心地よく聞こえるとくとくと鼓動を刻む心臓
だんだん周りが騒がしくなり
まるで起きろと言わているような声とともに差し込む光
私はその光に手を伸ばした。
幼稚園の入園式。
桜が咲いていて風によって花弁が舞う天気は晴れまだ風は少し寒いながらも日差しはぽかぽかしていた。
教室には様々な子供たちが笑っていたり、泣いていたりしていた。
彼女は特に泣くこともなければ他の子たちとも話さず後ろのほうに立っていた。
その中でも見つけたひと際目立つ容姿の彼、日本人にしては珍しい褐色の肌にミルクティーブロンドに瞳はガラスのように透き通ったブルーグレーの瞳。
可愛いより綺麗が似合うほどの整った横顔
それはまるで本から飛び出して来たおとぎ話に出てくる王子様のようだ、
無意識に彼を見つめていると視線が気になったのだろう。
彼が彼女を見た横から見てもとても綺麗なその瞳と
目と目があえば吸い込まれる様に目を逸らすことは出来なかった。
突然の酷い頭痛がして立っていられなかった。理性的に流れる涙。
ともかく幼い彼女はこの状況を理解できずただ痛みに抗うことも出来ずに
膝をついて頭を押さえる、まるで彼女だけ世界から切り離されたと思えるほどに静かだった。
走馬灯のように矢継ぎ早に流れる記憶
誰のなんて言わなくてもわかりきっていたこれは私の前世の記憶だ。
そして彼、まさかここはあの有名な漫画の世界だとでも言うのか
そんな思考もいきなりの肩の衝撃とともに先ほどの静けさが嘘というほど
騒がしい音とともに顔を上げると
私の肩に手を置いて顔を覗き込み大丈夫?と不安そうな顔をする彼。
近くなったその顔はやっぱり綺麗で無意識に伸びだ手は彼の頬をするりと撫でた。
がやがやとしてる教室の中僕は周りと違う見た目だからか声を掛けてくれる子は居なくて寂しくぼーっと外を見ていた。
ふいに視線を感じて振り向くと一人の女の子と目があった。
髪は真っ黒のくせっけでその目はアメジストみたいにキラキラしているのにどこか眠そうで伏せられていて、
可愛いなぁと思ってその目をじっと見つめた。
突然頭を押さえてうずくまるその子に吃驚して慌てて駆け寄った。
ねぇ、大丈夫?と声を掛けても顔を覗くもその目はどこか遠くを見てるようだった。
そのままどこかに行ってしまいそうで思わず肩を掴んで声を掛けながら軽く揺さぶる。
すると彼女の目に光が戻って僕をみたと共に伸ばされた手に思わずびくりとして身をこわばらせた。
「あ、ごめん余りにも綺麗な瞳だったから…私、飯宮環
貴方は?星のおうじさま?」
「ぼ、僕は降谷零!よろしく環ちゃん」
くすりと笑って女の子にからかう様に王子様なんて言われたのは初めてで顔に熱が集まっていくのが分かった。
でもそれ以上に容姿を褒めてくれたことが嬉しくて思わず彼女の手をぎゅっと握って笑顔を浮かべた僕とは裏腹に彼女の顔は微笑んでいるのにどこか悲しそうな気がした。
この日から彼女は僕の気になる子になった。