坂田銀時(現在95篇)

ふと見上げた校舎の窓際にいた、俺の生徒。
今まで見たことの無い憂いを帯びた表情が目に飛び込み、忘れられなくなった。
遠目に一瞬見えた頬を伝う光は、涙だろうか。
何故だか俺の心に一本、銀色の棘がチクリと刺さった。



授業中、ついあの生徒に目がいってしまう。
だがいつも通り明るい笑顔を振りまいているアイツに涙など欠片も見当たらず。
偶然二人きりになっても無邪気に笑うだけのアイツが、妙に痛々しく感じられて。
胸に刺さる銀の棘が増えた気がした。



姦しい女生徒達の話題は専ら恋愛談義。
バレンタインが近くなれば尚更だ。
漏れ聞こえたアイツの声に「今年は三つ手作り」の言葉が聞こえた。
「お父さんと弟と…」あと一人は?
気になったと同時にまた増えた、銀の棘。



四時間目が終わり、飯でも食うかと屋上へ。
珍しく先客がいるのに気付きこっそり覗けば、学ランが見えた。
一応立入禁止だからと注意する為近付けば、学ランの向こうにアイツの姿を見つけて足が止まる。
新たな銀の棘が、突き刺さった瞬間だった。



五時を過ぎ、見回りで廊下から自クラスの教室を覗くと、残っていたのはアイツを含めた男女数人。
あの中に、さっきの男はいるのだろうか。
同世代にしか入り込めないその空間は、思っていた以上に近くて遠い。
増え続ける銀の棘が、ジクジクと痛んだ。



クラスを六つに分けての班行動。
さり気なく俺はアイツの側で見守る。
「先生暇なの?」
からかうように言われて「うるせェ」と軽く小突けば、バラ色の頬ではにかむように笑うから。
自分の物にはならない眩しさは、柔らかな銀の棘となり、俺の心をくすぐった。



雨上がり。
七色の虹を見上げてはしゃぐアイツから目が離せない。
明日はいよいよバレンタイン。
アイツは誰に想いを告げるのか。
いつしか生徒以上の存在として意識し始めてから、増え続けている銀の棘は今日も俺を苦しめている。



「坂田先生が好き!」
放課後の思わぬ告白に唖然とする。
「やっぱり皆が言うように、生徒は彼女になれない?」
チョコを握りしめ、震え声で言われた俺は答えた。
「もう一回言ってみてよ」
「銀八先生が大好き!」
その言葉と共に、全ての銀の棘は抜け落ちた。
「俺もお前が…」

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今回は特殊な設定で書いてました。
Twitterの字数制限を活かしながら
■銀八目線であること
■一話毎に話数の数字を入れ込む
■銀の棘のワードを入れる(銀八の葛藤の象徴として)
■八話でまとめる(銀八だから)
の縛りの中で書いてみたのです。

でもこれ、言われないと分からないよなぁ(苦笑)
上手く活かしきれない自分が悲しい。

20180121(日)18:53
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