永劫の間で(九尾銀時)
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二人の想いが通じ合ってから数日が経ち。視力も完全に落ち着いた事から、詩織は一旦里に戻ることにした。
このまま共に過ごしたい気持ちはあったが、詩織の里では神隠しだと大騒ぎになっているようだ。ならば無事を知らせた方が良いだろうという、銀時の強い提案だった。
最初は渋っていた詩織も、銀時の仲間である眼鏡狸の妖怪から、里の騒ぎの現状を聞かされては納得せざるを得ず。
「また落ち着いたらすぐ戻ってくるね」
と後ろ髪を引かれながらも、里へと帰って行った。
銀時がぼんやりと詩織の後ろ姿を見送っていると、物音一つ立てずに近寄ってきた黒い影。振り向きもせず、ただ詩織の背中だけを見つめながら銀時は言った。
「何か言いたそうだな」
「いんや、別に」
そう返して銀時の後ろに立ったのは、知己である黒狼の十四郎。つい先程まで人里に下りていたらしい。土産と思しき甘味を銀時に放り渡すと、彼は言った。
「里に帰っちまえば、すぐにお前の事なんて忘れるだろうってか? それとも妖怪だらけの山ん中で、人間が生きていくのは無理だろうとでも思ったか」
「……うるせェよ」
「相変わらず情の深いやつだなァ。だが人間ってなァ、お前よりも更に情の深い生きもんだ。どんな形であれ、あの女は必ずお前に会いに来るだろうよ」
「さァ……どうだかな」
「たまには素直になりやがれ。期待してるから、あの女に再会の痕 を刻んだんだろうが。人間は寿命の短い生き物だが、すぐ死んじまう代わりに、生まれ変わるのも早い。その時に妖力を込めた痕があれば、どんな姿になっても見つけられるしな」
「……今日は珍しく饒舌だな」
「別に。ただ、別れに怯えちまう気持ちも分からなくはねェが、永劫の時を生きる間に、一つくらい特別な存在が出来るのも悪くはねェだろ。そこに本能から求める物があるのなら尚更……な」
「ま、里に下りたくなったらいつでも声かけろよ」と言って立ち去る十四郎。そんな彼に見送りの言葉がかけられることはない。
だが、既に詩織の姿の見えなくなった方向を見つめたまま、手の中の甘味にかぶりついた銀時の口角は上がっていて。
「……やっぱ詩織の方が断然うめェわ」
キレイに食べ終えながらも、不満げに言う銀時。
しかしその顔に浮かんでいたのは、何かが吹っ切れたような、明るい決意の色だった。
このまま共に過ごしたい気持ちはあったが、詩織の里では神隠しだと大騒ぎになっているようだ。ならば無事を知らせた方が良いだろうという、銀時の強い提案だった。
最初は渋っていた詩織も、銀時の仲間である眼鏡狸の妖怪から、里の騒ぎの現状を聞かされては納得せざるを得ず。
「また落ち着いたらすぐ戻ってくるね」
と後ろ髪を引かれながらも、里へと帰って行った。
銀時がぼんやりと詩織の後ろ姿を見送っていると、物音一つ立てずに近寄ってきた黒い影。振り向きもせず、ただ詩織の背中だけを見つめながら銀時は言った。
「何か言いたそうだな」
「いんや、別に」
そう返して銀時の後ろに立ったのは、知己である黒狼の十四郎。つい先程まで人里に下りていたらしい。土産と思しき甘味を銀時に放り渡すと、彼は言った。
「里に帰っちまえば、すぐにお前の事なんて忘れるだろうってか? それとも妖怪だらけの山ん中で、人間が生きていくのは無理だろうとでも思ったか」
「……うるせェよ」
「相変わらず情の深いやつだなァ。だが人間ってなァ、お前よりも更に情の深い生きもんだ。どんな形であれ、あの女は必ずお前に会いに来るだろうよ」
「さァ……どうだかな」
「たまには素直になりやがれ。期待してるから、あの女に再会の
「……今日は珍しく饒舌だな」
「別に。ただ、別れに怯えちまう気持ちも分からなくはねェが、永劫の時を生きる間に、一つくらい特別な存在が出来るのも悪くはねェだろ。そこに本能から求める物があるのなら尚更……な」
「ま、里に下りたくなったらいつでも声かけろよ」と言って立ち去る十四郎。そんな彼に見送りの言葉がかけられることはない。
だが、既に詩織の姿の見えなくなった方向を見つめたまま、手の中の甘味にかぶりついた銀時の口角は上がっていて。
「……やっぱ詩織の方が断然うめェわ」
キレイに食べ終えながらも、不満げに言う銀時。
しかしその顔に浮かんでいたのは、何かが吹っ切れたような、明るい決意の色だった。
