魔滅撒きたりて福来たる(白夜叉)
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『白夜叉が瀕死の重傷を負った』
そんな噂が戦場を駆け巡った日。私はたまたま彼と同じ救護所で手当てを受けていた。
丁度隣のベッドで処置を受けていた彼は確かに重傷ではあったが、口は無駄に元気だったようで、
「イテェよ! もっと優しくしてくんない?」
「可愛いお姉さんに添い寝してもらいたいんですけど~」
と呆れた発言を連発していた。
白夜叉の武勇伝は、攘夷志士としていつも聞いていたけれど、実は未だ本人を一度も見た事が無かった私はこっそりと仕切りのカーテンの隙間から隣を覗く。
そこにいたのは青年と言うには幼く見える白髪の男で。こんな子供があの激しい戦いを潜り抜け、名だたる功績をあげている白夜叉だったのかと驚いた私は思わず力が入ってしまい、カーテンを開けてしまった。
瞬時に鋭い殺気が向けられたがすぐにそれは消え去り、私を見た白夜叉がニヤリと笑う。
「いやんエッチ。動けない俺を襲いに来たってか?」
「え? いや、あの……」
ふざけた軽口にどう対応して良いか分からず、困っている私に彼は言った。
「暇なら相手してくんない? 来んのがヤローばっかでいい加減ウンザリしてたんだよ」
その日から私たちは、頻繁に話をするようになった。
怪我が治ってからは共に戦場で戦うようになり、お互いが背中を預ける事もしばしば。彼が信頼する仲間たちとも交流が深まり、戦況も上向いているように思えていた。
でも、何故か感じる違和感。
その名の通り夜叉の如く見事な戦いを見せる彼はいつも前を見て、仲間と共に活路を切り開いていっているはずなのに。日々増え続けている体の傷が、彼の心までも深く抉っているように見えて仕方なかった。
「ねぇ、白夜叉は何で攘夷戦争に参加したの?」
気になって尋ねる。
「俺の強さを証明するため? みたいな」
「真面目に聞いてるんだけどな。確かに強いのは知ってるけど、ちょっと背負い込みな気がするよ」
「……どういう意味だよ」
私の言葉が気に障ったのか、戦いの時にしか見せない真剣な顔で私を睨んだ彼。けれども不思議と怖くは無かった。
「どんなに強くたって、自分が戦える許容範囲は決まってるでしょ? それなのに白夜叉は他人の分まで無理に一人で抱え込もうとしてるみたい。この間の重傷の原因だって、仲間を庇ったからでしょ? 守りたいって気持ちは分かるけど、だからと言って自分を蔑ろにして傷を受けるのはちょっと違う気がす……」
そこから先は言えなかった。
目の前の赤い瞳が揺れたと同時に、一瞬強く頭が揺れる。大きな手で口を塞がれたのだと理解したのはその数秒後だった。
「知ったような口きいてんじゃねェよ」
絞り出すような声に、ああ、私は触れてはならない物に触れてしまったんだと気付く。それでも何故か自分の思いを伝えたくて。
……伝えなければいけない気がして。
「そうだね、私は何も知らないよ」
そう言いながら、ポケットの中を探った。
「白夜叉は自分の事を話してくれないもん。分かるわけ無いよ。でも同じ攘夷志士として、大切な……仲間として君が傷付くのを見るのは嫌だし、無茶はして欲しくないよ」
取り出した小袋を開き、中身を摘まむ。
「だから……えい!」
「わっぷ! 何だよこれ!」
私の暴挙に慌てる白夜叉。コツンと頭に当たってパラパラと地面に落ちたそれは、福豆だ。
「豆ェ? いきなりこんなもん投げてくんじゃねェよ」
「鬼は~外。福は~内」
「えェ!? 俺鬼なの? 夜叉じゃなくて鬼?」
「そうじゃなくて」
持っていた豆を投げ切った私は、未だ彼の髪に残っている豆を払い落としながら言った。
そんな噂が戦場を駆け巡った日。私はたまたま彼と同じ救護所で手当てを受けていた。
丁度隣のベッドで処置を受けていた彼は確かに重傷ではあったが、口は無駄に元気だったようで、
「イテェよ! もっと優しくしてくんない?」
「可愛いお姉さんに添い寝してもらいたいんですけど~」
と呆れた発言を連発していた。
白夜叉の武勇伝は、攘夷志士としていつも聞いていたけれど、実は未だ本人を一度も見た事が無かった私はこっそりと仕切りのカーテンの隙間から隣を覗く。
そこにいたのは青年と言うには幼く見える白髪の男で。こんな子供があの激しい戦いを潜り抜け、名だたる功績をあげている白夜叉だったのかと驚いた私は思わず力が入ってしまい、カーテンを開けてしまった。
瞬時に鋭い殺気が向けられたがすぐにそれは消え去り、私を見た白夜叉がニヤリと笑う。
「いやんエッチ。動けない俺を襲いに来たってか?」
「え? いや、あの……」
ふざけた軽口にどう対応して良いか分からず、困っている私に彼は言った。
「暇なら相手してくんない? 来んのがヤローばっかでいい加減ウンザリしてたんだよ」
その日から私たちは、頻繁に話をするようになった。
怪我が治ってからは共に戦場で戦うようになり、お互いが背中を預ける事もしばしば。彼が信頼する仲間たちとも交流が深まり、戦況も上向いているように思えていた。
でも、何故か感じる違和感。
その名の通り夜叉の如く見事な戦いを見せる彼はいつも前を見て、仲間と共に活路を切り開いていっているはずなのに。日々増え続けている体の傷が、彼の心までも深く抉っているように見えて仕方なかった。
「ねぇ、白夜叉は何で攘夷戦争に参加したの?」
気になって尋ねる。
「俺の強さを証明するため? みたいな」
「真面目に聞いてるんだけどな。確かに強いのは知ってるけど、ちょっと背負い込みな気がするよ」
「……どういう意味だよ」
私の言葉が気に障ったのか、戦いの時にしか見せない真剣な顔で私を睨んだ彼。けれども不思議と怖くは無かった。
「どんなに強くたって、自分が戦える許容範囲は決まってるでしょ? それなのに白夜叉は他人の分まで無理に一人で抱え込もうとしてるみたい。この間の重傷の原因だって、仲間を庇ったからでしょ? 守りたいって気持ちは分かるけど、だからと言って自分を蔑ろにして傷を受けるのはちょっと違う気がす……」
そこから先は言えなかった。
目の前の赤い瞳が揺れたと同時に、一瞬強く頭が揺れる。大きな手で口を塞がれたのだと理解したのはその数秒後だった。
「知ったような口きいてんじゃねェよ」
絞り出すような声に、ああ、私は触れてはならない物に触れてしまったんだと気付く。それでも何故か自分の思いを伝えたくて。
……伝えなければいけない気がして。
「そうだね、私は何も知らないよ」
そう言いながら、ポケットの中を探った。
「白夜叉は自分の事を話してくれないもん。分かるわけ無いよ。でも同じ攘夷志士として、大切な……仲間として君が傷付くのを見るのは嫌だし、無茶はして欲しくないよ」
取り出した小袋を開き、中身を摘まむ。
「だから……えい!」
「わっぷ! 何だよこれ!」
私の暴挙に慌てる白夜叉。コツンと頭に当たってパラパラと地面に落ちたそれは、福豆だ。
「豆ェ? いきなりこんなもん投げてくんじゃねェよ」
「鬼は~外。福は~内」
「えェ!? 俺鬼なの? 夜叉じゃなくて鬼?」
「そうじゃなくて」
持っていた豆を投げ切った私は、未だ彼の髪に残っている豆を払い落としながら言った。
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