一年の恋は元旦にあり(銀時)
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「うん……良い大人が馬鹿みたいだよね~」
何故だかこの雰囲気が怖くなって、私は茶化すように答えた。でも銀時の表情は変わらない。
「んな事思ってねェよ。お前らしいしな」
「そ、そう?」
普段の銀時と違って、調子が狂う。こんな時どうすれば良いのか、私には分からなかった。だからと言って沈黙するのも怖くて、私は必死に頭を働かせる。
「えっと、あの……何でこの事、銀時が知ってるの? そもそもこんな依頼をしたのって誰なのよ。少なくとも私じゃ無いわよね」
「守秘義務があっから答えらんねーよ。んな事より、もっと大事なことがあんだろ?」
「大事なこと?」
疑問をぶつけて会話を続けようとした私だったが、逆に疑問を投げかけられてしまった。それにしても、大事なことって何だろう。
「……分かんない」
「お前ねェ……」
真剣な表情が一変、気の抜けた顔で大きなため息をつく銀時。本当に何が何だか分からない私は、首を傾げる事しか出来ない。
「鈍い奴だと分かっちゃいたけど、ここまでとはなァ」
頭をガシガシと掻きながら、何かを考えている銀時。ますます訳の分からない私は、ただ銀時の動向を見守っていた。
そんな私を見て諦めたのか、銀時が再びこちらを見つめてくる。
「詩織はその夢を、誰に叶えて欲しかったんだよ。んでもって俺は、例え依頼であったとしても、こういう話を軽い気持ちで受ける気はねェよ」
「誰に叶えて……? 軽い気持ち……!」
そこまで言われて気付いた。私の夢にはもう一つ、重要なポイントがあった事を。
「私の事を大切に思ってくれている、私が大好きになった人――」
「その相手は今……どこにいる?」
切なげな表情で、私の心を探るように銀時が言う。
ああ、そうか。さっき銀時の瞳の奥に感じた不安はこれだったんだ。
「自惚れても良いんだったら……」
この夢以上に心の奥に秘めていた、銀時への想い。
自分から告白する勇気なんて無かったから、いつか自然消滅する日が来ると諦めていたけれど。銀時が踏み出してくれた一歩は、私の背中を押した。
「私の……目の前にいるよ」
そう言うと同時に、自然と浮かぶ笑み。
本当は奇麗に笑えれば良かったのに、遠回しながらも気持ちを伝えられた嬉しさからか、涙までも込み上げてきて。結果的に奇妙な泣き笑いになってしまった。
「ったく……」
銀時が、呆れたように笑いながら手を伸ばす。
大きくて温かい手が私の頬を包み込むと、そのまま引き寄せられるように顔が近付いた。
「ずっと自惚れとけよ」
「……ん」
そっと重ねられた唇は、お互いの心を強く引き寄せようとしているのか離れがたくて。しばしの間私たちは、その心地よさに酔いしれていた。
「忘れらんねェ正月になっただろ?」
息をするのも忘れる程に深い口付けからようやく解放され、銀時との視線が合う。もう不安の色など欠片も無い銀時が、まるで子供のように自信ありげな表情で言ったのがおかしくて、私は笑いながらコクリと頷いたのだった。
銀時の提案で、私たちはそのまま夜明けを待ち、初日の出を拝んでからかぶき町へと戻った。
後日お店に来てくれた新八くんから、実は今回の依頼人は自分と神楽ちゃんだったという話を聞かされる。
どうやら彼らは、私達の関係が進展しない事にずっとヤキモキしていたらしい。そんな時、私が以前酔った勢いで漏らしていたらしいあの夢の話を利用して、私たちをくっつけようとしたんだそうだ。
イマイチ煮え切らない銀時も、仕事として依頼されてしまえば男を見せてくれるだろうと見越して。
「これで二人は両思いですね。いやぁ、新年早々良い仕事したなぁ。あれから銀さん、凄く機嫌が良いんです。詩織さんを想い続けて、やっと成就しましたしね。末永くお幸せに」
クスクスと笑いながら言い残して帰って行った新八くんには、頭が上がらない。
「今度、きちんとお礼をしなくちゃね」
遠のいていく新八くんの後ろ姿を見ながら言った私の頬は、緩みっぱなしで。その後の接客に少々支障が出てしまったのは、また別の話――。
~了~
何故だかこの雰囲気が怖くなって、私は茶化すように答えた。でも銀時の表情は変わらない。
「んな事思ってねェよ。お前らしいしな」
「そ、そう?」
普段の銀時と違って、調子が狂う。こんな時どうすれば良いのか、私には分からなかった。だからと言って沈黙するのも怖くて、私は必死に頭を働かせる。
「えっと、あの……何でこの事、銀時が知ってるの? そもそもこんな依頼をしたのって誰なのよ。少なくとも私じゃ無いわよね」
「守秘義務があっから答えらんねーよ。んな事より、もっと大事なことがあんだろ?」
「大事なこと?」
疑問をぶつけて会話を続けようとした私だったが、逆に疑問を投げかけられてしまった。それにしても、大事なことって何だろう。
「……分かんない」
「お前ねェ……」
真剣な表情が一変、気の抜けた顔で大きなため息をつく銀時。本当に何が何だか分からない私は、首を傾げる事しか出来ない。
「鈍い奴だと分かっちゃいたけど、ここまでとはなァ」
頭をガシガシと掻きながら、何かを考えている銀時。ますます訳の分からない私は、ただ銀時の動向を見守っていた。
そんな私を見て諦めたのか、銀時が再びこちらを見つめてくる。
「詩織はその夢を、誰に叶えて欲しかったんだよ。んでもって俺は、例え依頼であったとしても、こういう話を軽い気持ちで受ける気はねェよ」
「誰に叶えて……? 軽い気持ち……!」
そこまで言われて気付いた。私の夢にはもう一つ、重要なポイントがあった事を。
「私の事を大切に思ってくれている、私が大好きになった人――」
「その相手は今……どこにいる?」
切なげな表情で、私の心を探るように銀時が言う。
ああ、そうか。さっき銀時の瞳の奥に感じた不安はこれだったんだ。
「自惚れても良いんだったら……」
この夢以上に心の奥に秘めていた、銀時への想い。
自分から告白する勇気なんて無かったから、いつか自然消滅する日が来ると諦めていたけれど。銀時が踏み出してくれた一歩は、私の背中を押した。
「私の……目の前にいるよ」
そう言うと同時に、自然と浮かぶ笑み。
本当は奇麗に笑えれば良かったのに、遠回しながらも気持ちを伝えられた嬉しさからか、涙までも込み上げてきて。結果的に奇妙な泣き笑いになってしまった。
「ったく……」
銀時が、呆れたように笑いながら手を伸ばす。
大きくて温かい手が私の頬を包み込むと、そのまま引き寄せられるように顔が近付いた。
「ずっと自惚れとけよ」
「……ん」
そっと重ねられた唇は、お互いの心を強く引き寄せようとしているのか離れがたくて。しばしの間私たちは、その心地よさに酔いしれていた。
「忘れらんねェ正月になっただろ?」
息をするのも忘れる程に深い口付けからようやく解放され、銀時との視線が合う。もう不安の色など欠片も無い銀時が、まるで子供のように自信ありげな表情で言ったのがおかしくて、私は笑いながらコクリと頷いたのだった。
銀時の提案で、私たちはそのまま夜明けを待ち、初日の出を拝んでからかぶき町へと戻った。
後日お店に来てくれた新八くんから、実は今回の依頼人は自分と神楽ちゃんだったという話を聞かされる。
どうやら彼らは、私達の関係が進展しない事にずっとヤキモキしていたらしい。そんな時、私が以前酔った勢いで漏らしていたらしいあの夢の話を利用して、私たちをくっつけようとしたんだそうだ。
イマイチ煮え切らない銀時も、仕事として依頼されてしまえば男を見せてくれるだろうと見越して。
「これで二人は両思いですね。いやぁ、新年早々良い仕事したなぁ。あれから銀さん、凄く機嫌が良いんです。詩織さんを想い続けて、やっと成就しましたしね。末永くお幸せに」
クスクスと笑いながら言い残して帰って行った新八くんには、頭が上がらない。
「今度、きちんとお礼をしなくちゃね」
遠のいていく新八くんの後ろ姿を見ながら言った私の頬は、緩みっぱなしで。その後の接客に少々支障が出てしまったのは、また別の話――。
~了~
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