夏の思い出(銀時)
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まだまだ気温は高いし、蝉だって鳴いているというのに、暦の上ではもう秋だっていうんだからおかしなものだと思う。今年の立秋は8月8日。カレンダーを見れば、既に遠い過去のようだ。
「もう夏も終わりかぁ」
どうにも納得のいかない気持ちを抱えながら縁側に座り、手に持った自家製かき氷を崩していく。調子に乗って買い過ぎてしまったシロップも、そろそろ残り少なくなっていた。
「スーパーの在庫も少なかったもんね。寂しいの」
パクリと氷を口に含めば、キーンとした冷たさに頭が痛くなる。でもその刺激が心地よくて、次々と氷を口に運んでいった。
そして半分ほど食べ終え、人心地ついた頃。ぼんやりと空を眺めながら思う。
「今年の夏も平和だったなぁ……刺激的な思い出なんて何一つ無かったし」
恋の季節だとはよく言ったもので、この夏、友人たちにはいつの間にか彼氏ができていた。
ふと気がつけば、独り者は私だけという始末。
ーー詩織も早く彼氏作りなよ。
ーー彼氏ができたら、あんたも少しは女らしくなれるんじゃない?
「勝手なことばっか言ってくれちゃって」
嫌な記憶を思い出す。なんだかムシャクシャしてきて、かき氷を一気に頬張った。
「……っ!」
すると案の定、想像以上の冷たさが激しい頭痛を引き起こす。
「イタタタタ……っ」
あまりの痛みに、思わず頭を抱えこんだ時だった。
「うぉ……っと」
慌てた声と共に、足元に滑り込んできたもの。
「あっぶねー。もう少しで落ちちまうとこだったぜ」
「銀ちゃん!」
それは万事屋の銀ちゃんだった。
「お前なァ、かき氷くらいもう少し上品に食えねェのかよ」
「何よ、かき氷くらい好きに食べたって良いでしょうが」
銀ちゃんによって救われたかき氷の器を受け取りながら、憎まれ口を叩く。出会った当初から妙に波長が合い、気心も知れていることから、いつだって私達はこんな調子だった。
「そりゃまァそーだけど、食いもんを粗末にするような真似だけはすんなよ」
「別に粗末にしようとしてたわけじゃないもん。手が滑っただけだもん」
「その滑っただけのかき氷を救ったのが銀さんっつーわけね。んじゃ、俺にも一口ちょーだい」
「ええ〜? 何よそれ。食べたきゃ自分で作るなり買うなりしなさいよ」
そう言いながら私は、未だ銀ちゃんの手の中にある器と一緒に掴んだスプーンに手を伸ばす。が、それを華麗にかわした銀ちゃんは、そのままかき氷にスプーンを突き刺しながら言った。
「一口くらい良いだろーが。助けてもらってお礼も無しってか?」
「んな強引な。っていうかそもそもなんで銀ちゃんがここにいるのよ。勝手にうちの庭に入り込んで……」
「あ、溶けちまう!」
「え?」
銀ちゃんの声に驚いて動きの止まった私の隙をつき、サクリと音を立てながら掬われた氷は、流れるように銀ちゃんの口の中に吸い込まれる。
「んー、冷てェ」
「こら、銀ちゃん!」
あっさりと食べられてしまった事が悔しくて、私は力づくでスプーンを奪い返そうとした。ーーところが。
「ほら、お前も」
「むぐっ」
素早い動きで掬われた氷が、私の口の中を満たす。しかもそのスプーンは再び氷を掬い、またも銀ちゃんの口の中へと入っていった。
「やっぱうめェよなァ」
「……うん」
銀ちゃんがあまりに幸せそうに言うから、思わず頷いてしまう。
そしてそのまま調子に乗って氷を口に運んでいく銀ちゃんを見ていた時、ふと気付いた。
「あれ? これってひょっとして間接キ……」
そこまで言って、咄嗟に口を押さえる。すると銀ちゃんはおもむろに、残り少ない氷を掬って私の口に押し込んだ。
「夏の味って感じがするだろ?」
口の中いっぱいに広がった氷は先程までとは違い、何故かほんのり甘酸っぱさも感じられて。
「これって刺激的な思い出になんねー?」
そう言って私に向けられた銀ちゃんの笑顔は、過ぎゆく夏の一番の思い出となった。
〜了〜
「もう夏も終わりかぁ」
どうにも納得のいかない気持ちを抱えながら縁側に座り、手に持った自家製かき氷を崩していく。調子に乗って買い過ぎてしまったシロップも、そろそろ残り少なくなっていた。
「スーパーの在庫も少なかったもんね。寂しいの」
パクリと氷を口に含めば、キーンとした冷たさに頭が痛くなる。でもその刺激が心地よくて、次々と氷を口に運んでいった。
そして半分ほど食べ終え、人心地ついた頃。ぼんやりと空を眺めながら思う。
「今年の夏も平和だったなぁ……刺激的な思い出なんて何一つ無かったし」
恋の季節だとはよく言ったもので、この夏、友人たちにはいつの間にか彼氏ができていた。
ふと気がつけば、独り者は私だけという始末。
ーー詩織も早く彼氏作りなよ。
ーー彼氏ができたら、あんたも少しは女らしくなれるんじゃない?
「勝手なことばっか言ってくれちゃって」
嫌な記憶を思い出す。なんだかムシャクシャしてきて、かき氷を一気に頬張った。
「……っ!」
すると案の定、想像以上の冷たさが激しい頭痛を引き起こす。
「イタタタタ……っ」
あまりの痛みに、思わず頭を抱えこんだ時だった。
「うぉ……っと」
慌てた声と共に、足元に滑り込んできたもの。
「あっぶねー。もう少しで落ちちまうとこだったぜ」
「銀ちゃん!」
それは万事屋の銀ちゃんだった。
「お前なァ、かき氷くらいもう少し上品に食えねェのかよ」
「何よ、かき氷くらい好きに食べたって良いでしょうが」
銀ちゃんによって救われたかき氷の器を受け取りながら、憎まれ口を叩く。出会った当初から妙に波長が合い、気心も知れていることから、いつだって私達はこんな調子だった。
「そりゃまァそーだけど、食いもんを粗末にするような真似だけはすんなよ」
「別に粗末にしようとしてたわけじゃないもん。手が滑っただけだもん」
「その滑っただけのかき氷を救ったのが銀さんっつーわけね。んじゃ、俺にも一口ちょーだい」
「ええ〜? 何よそれ。食べたきゃ自分で作るなり買うなりしなさいよ」
そう言いながら私は、未だ銀ちゃんの手の中にある器と一緒に掴んだスプーンに手を伸ばす。が、それを華麗にかわした銀ちゃんは、そのままかき氷にスプーンを突き刺しながら言った。
「一口くらい良いだろーが。助けてもらってお礼も無しってか?」
「んな強引な。っていうかそもそもなんで銀ちゃんがここにいるのよ。勝手にうちの庭に入り込んで……」
「あ、溶けちまう!」
「え?」
銀ちゃんの声に驚いて動きの止まった私の隙をつき、サクリと音を立てながら掬われた氷は、流れるように銀ちゃんの口の中に吸い込まれる。
「んー、冷てェ」
「こら、銀ちゃん!」
あっさりと食べられてしまった事が悔しくて、私は力づくでスプーンを奪い返そうとした。ーーところが。
「ほら、お前も」
「むぐっ」
素早い動きで掬われた氷が、私の口の中を満たす。しかもそのスプーンは再び氷を掬い、またも銀ちゃんの口の中へと入っていった。
「やっぱうめェよなァ」
「……うん」
銀ちゃんがあまりに幸せそうに言うから、思わず頷いてしまう。
そしてそのまま調子に乗って氷を口に運んでいく銀ちゃんを見ていた時、ふと気付いた。
「あれ? これってひょっとして間接キ……」
そこまで言って、咄嗟に口を押さえる。すると銀ちゃんはおもむろに、残り少ない氷を掬って私の口に押し込んだ。
「夏の味って感じがするだろ?」
口の中いっぱいに広がった氷は先程までとは違い、何故かほんのり甘酸っぱさも感じられて。
「これって刺激的な思い出になんねー?」
そう言って私に向けられた銀ちゃんの笑顔は、過ぎゆく夏の一番の思い出となった。
〜了〜
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