雨音と甘音と(土方)
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台風が来ている。
激しい風の音と、窓を打ち付ける雨音は煩いけれど、今の私には何故か心地良かった。
「何笑ってんだよ」
玄関先で十四郎が、不機嫌そうに言う。この暴風雨のせいで、その体は全身ずぶ濡れだった。
「別に。ほら、早くシャワーしないと風邪ひくよ」
濡れたままで良いから、とバスルームに十四郎を誘導し、強引に制服を剥ぎ取っていく。
「自分でやれるから!」と怒るのも御構い無しに下着まで脱がせると、一旦バスルームを出た。
シャワーの音を聞きながら制服をネットに入れ、洗濯機に放り込む。ついでに自分の服も洗濯機に放り込み、全裸になってバスタオルを巻いたタイミングで、十四郎がバスルームから出てきた。
「……何やってんだ、お前」
「見て分かんない? 誘ってんの」
「俺は今仕事中だ」
「じゃあ何で私の部屋に来たのよ」
「雨風を凌ぐために決まってんだろ」
「だったら……」
会話をしながらも、さりげなく十四郎の腰に指を当てて撫で付けていれば、ゆっくりと中心の角度が変わっていく。
「ちゃんと乾かして帰らなきゃ」
腰から先端へと指を滑らせた私は、滲み出す滑りを掬った。それを舐め取りながら十四郎を上目遣いに見れば、ギラギラとした雄の視線と絡み合う。
「ったく……お前ってやつは」
その言葉は、噛み付くように重ねられた唇から漏れ出ていた。
雨が、窓を叩く。
風が、窓を揺らす。
その音はやっぱり、室内の音をかき消すほどに煩くて。
「詩織……」
「な……に……?」
「……だ」
「え……? 聞こえな……いよ……っ」
どのくらいの時間が経ったのだろう。いつしか外は静かになっていた。
気だるい体を起こし、十四郎の咥えるタバコを取り上げる。
「何すんだよ」
「こんなに良い女が隣にいるのに、未だ口寂しいの?」
「それとこれとは話が別だろ」
「あっそ」
フィルターを強く噛み、冷たい眼差しを向ければ、諦めたようにタバコを取り上げ灰皿に押し付ける十四郎。
「っとに、お前ってやつは」
そう言って重ねられた唇は、優しかった。
「さてと、そろそろ屯所に戻らねーとな」
「そうだね。さすがに皆が心配してるでしょ」
「どうだかな」
途中律儀に干された制服は、未だ少ししっとりしているけれど。きっと今触れている肌の熱が、屯所に着くまでに乾かしてくれるだろう。
「じゃァな」
そう言って十四郎は、振り向きもせず部屋から出て行く。そんな彼の背中を見ながら、私は言った。
「聞こえてたよ」
でも彼は、振り返ることも、歩みを止めることもしないから。
「あの時、本当は聞こえてたんだ」
十四郎の背中に向けて、叫んだ。
「私も……愛してるよっ!」
その言葉に手を挙げて答えてくれた十四郎は、やはり振り返ることなく立ち去っていく。
ーーでも。
『お前を愛してるんだ』
雨音が消せなかった十四郎の甘い囁きは、甘音となって私の心に留まり続けた。
〜了〜
激しい風の音と、窓を打ち付ける雨音は煩いけれど、今の私には何故か心地良かった。
「何笑ってんだよ」
玄関先で十四郎が、不機嫌そうに言う。この暴風雨のせいで、その体は全身ずぶ濡れだった。
「別に。ほら、早くシャワーしないと風邪ひくよ」
濡れたままで良いから、とバスルームに十四郎を誘導し、強引に制服を剥ぎ取っていく。
「自分でやれるから!」と怒るのも御構い無しに下着まで脱がせると、一旦バスルームを出た。
シャワーの音を聞きながら制服をネットに入れ、洗濯機に放り込む。ついでに自分の服も洗濯機に放り込み、全裸になってバスタオルを巻いたタイミングで、十四郎がバスルームから出てきた。
「……何やってんだ、お前」
「見て分かんない? 誘ってんの」
「俺は今仕事中だ」
「じゃあ何で私の部屋に来たのよ」
「雨風を凌ぐために決まってんだろ」
「だったら……」
会話をしながらも、さりげなく十四郎の腰に指を当てて撫で付けていれば、ゆっくりと中心の角度が変わっていく。
「ちゃんと乾かして帰らなきゃ」
腰から先端へと指を滑らせた私は、滲み出す滑りを掬った。それを舐め取りながら十四郎を上目遣いに見れば、ギラギラとした雄の視線と絡み合う。
「ったく……お前ってやつは」
その言葉は、噛み付くように重ねられた唇から漏れ出ていた。
雨が、窓を叩く。
風が、窓を揺らす。
その音はやっぱり、室内の音をかき消すほどに煩くて。
「詩織……」
「な……に……?」
「……だ」
「え……? 聞こえな……いよ……っ」
どのくらいの時間が経ったのだろう。いつしか外は静かになっていた。
気だるい体を起こし、十四郎の咥えるタバコを取り上げる。
「何すんだよ」
「こんなに良い女が隣にいるのに、未だ口寂しいの?」
「それとこれとは話が別だろ」
「あっそ」
フィルターを強く噛み、冷たい眼差しを向ければ、諦めたようにタバコを取り上げ灰皿に押し付ける十四郎。
「っとに、お前ってやつは」
そう言って重ねられた唇は、優しかった。
「さてと、そろそろ屯所に戻らねーとな」
「そうだね。さすがに皆が心配してるでしょ」
「どうだかな」
途中律儀に干された制服は、未だ少ししっとりしているけれど。きっと今触れている肌の熱が、屯所に着くまでに乾かしてくれるだろう。
「じゃァな」
そう言って十四郎は、振り向きもせず部屋から出て行く。そんな彼の背中を見ながら、私は言った。
「聞こえてたよ」
でも彼は、振り返ることも、歩みを止めることもしないから。
「あの時、本当は聞こえてたんだ」
十四郎の背中に向けて、叫んだ。
「私も……愛してるよっ!」
その言葉に手を挙げて答えてくれた十四郎は、やはり振り返ることなく立ち去っていく。
ーーでも。
『お前を愛してるんだ』
雨音が消せなかった十四郎の甘い囁きは、甘音となって私の心に留まり続けた。
〜了〜
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