プレゼントは熱と共に(高杉)
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その日、配給のヤクルコを配っていた詩織は、高杉を探していた。
本来なら真っ先に渡すべき上官なのに、その姿がどこにも見当たらない。仕方なく近くにいる者から順に配り、残り数本となった時。ようやく見つけた後ろ姿。
屋根の上で、風に弄ばれる髪をそのままに敵の陣地を見つめる高杉に、詩織はしばし見惚れてしまった。
「あの……高杉さん。配給をお持ちしました」
「あァ。ありがとよ」
いつものようにヤクルコを受け取り、綺麗にフタを取った高杉はそれを一気に飲み干すと、少しだけ物足りなさそうにしながら、空の容器を詩織に渡した。
その容器をゴミの回収袋に入れた詩織は、改めて高杉の顔を見る。そして一つ大きく息を吸うと、覚悟を決めたように保冷ケースから最後の一本を取り出して言った。
「お誕生日おめでとうございますっ!」
「あん?」
突然の事に、眉間にしわを寄せた高杉が詩織を睨む。だが差し出した手の中にあるヤクルコを見ると、呆れたように目を丸くした。
「……随分と可愛い事してくれるじゃねェか」
「すみません。さすがにちゃんとしたプレゼントを調達する事は出来なくて……ヤクルコを簡単にラッピングするのが精一杯でした。あ、これは別に悪い事をしてゲットした物じゃないですからね! 私の配給分なので、安心してお飲みください」
頭を下げ、説明を加えて詩織が新たに差し出したヤクルコは、くびれ部分にリボンが巻かれているシンプルなもの。高杉へのプレゼントにしてはちゃち過ぎる代物だが、それでも今戦場にいる詩織には、これが精一杯だった。
そんな詩織に、高杉はどうしたか。
「受け取ってやっても良いが……誕生日プレゼントっつー割には物足りねェなァ」
そう言って詩織の手からヤクルコを取り上げ、先ほどと同じように蓋を開けた高杉は、チラリと詩織を見る。そのまま容器を口に当てて傾けるとーー。
「……っ」
詩織の口の中に広がる、甘く冷たい液体。でも唇は燃えるように熱かった。
「少しは頭を使ってみろ」
ゆっくりと離れた唇を、ペロリと舐める高杉。ぶつかった視線が何を求めているのか、その理由が詩織にははっきりと分かる。
「……はい」
そう言った詩織は、高杉の手の中のヤクルコを引き寄せた。そして今度は、詩織から高杉に与えられる熱。
「……お誕生日おめでとうございます。これでは未だ……足りませんか?」
恥ずかしそうに頬を染めて言う詩織に、高杉は優しい笑顔を向けて言った。
「まァ……悪かねェな」
〜了〜
本来なら真っ先に渡すべき上官なのに、その姿がどこにも見当たらない。仕方なく近くにいる者から順に配り、残り数本となった時。ようやく見つけた後ろ姿。
屋根の上で、風に弄ばれる髪をそのままに敵の陣地を見つめる高杉に、詩織はしばし見惚れてしまった。
「あの……高杉さん。配給をお持ちしました」
「あァ。ありがとよ」
いつものようにヤクルコを受け取り、綺麗にフタを取った高杉はそれを一気に飲み干すと、少しだけ物足りなさそうにしながら、空の容器を詩織に渡した。
その容器をゴミの回収袋に入れた詩織は、改めて高杉の顔を見る。そして一つ大きく息を吸うと、覚悟を決めたように保冷ケースから最後の一本を取り出して言った。
「お誕生日おめでとうございますっ!」
「あん?」
突然の事に、眉間にしわを寄せた高杉が詩織を睨む。だが差し出した手の中にあるヤクルコを見ると、呆れたように目を丸くした。
「……随分と可愛い事してくれるじゃねェか」
「すみません。さすがにちゃんとしたプレゼントを調達する事は出来なくて……ヤクルコを簡単にラッピングするのが精一杯でした。あ、これは別に悪い事をしてゲットした物じゃないですからね! 私の配給分なので、安心してお飲みください」
頭を下げ、説明を加えて詩織が新たに差し出したヤクルコは、くびれ部分にリボンが巻かれているシンプルなもの。高杉へのプレゼントにしてはちゃち過ぎる代物だが、それでも今戦場にいる詩織には、これが精一杯だった。
そんな詩織に、高杉はどうしたか。
「受け取ってやっても良いが……誕生日プレゼントっつー割には物足りねェなァ」
そう言って詩織の手からヤクルコを取り上げ、先ほどと同じように蓋を開けた高杉は、チラリと詩織を見る。そのまま容器を口に当てて傾けるとーー。
「……っ」
詩織の口の中に広がる、甘く冷たい液体。でも唇は燃えるように熱かった。
「少しは頭を使ってみろ」
ゆっくりと離れた唇を、ペロリと舐める高杉。ぶつかった視線が何を求めているのか、その理由が詩織にははっきりと分かる。
「……はい」
そう言った詩織は、高杉の手の中のヤクルコを引き寄せた。そして今度は、詩織から高杉に与えられる熱。
「……お誕生日おめでとうございます。これでは未だ……足りませんか?」
恥ずかしそうに頬を染めて言う詩織に、高杉は優しい笑顔を向けて言った。
「まァ……悪かねェな」
〜了〜
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