一年の恋は元旦にあり(銀時)
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再び実家の店に寄り、親に訝しげな表情をされながら厚手のコートを羽織って再びスクーターに乗る。
そして今に至っているのだが……。
出来るだけ暖かい格好をしては来たものの、既に歯の根が合わないほどに体が震えていた。
「……着いたぜ」
ようやく目的地に着いたものの、もう言葉を発するのも億劫なほどに体は冷え切っている。
私はノロノロとスクーターから降りると、無言のまま銀時の後を追って歩いた。そんな私を見て、苦笑いをする銀時。
「ほんっと詩織は寒がりだよな。……仕方ねェから、銀さんがあっためてやるよ」
悪びれもせず言う銀時に、誰のせいでこんな寒い思いをしてるんだ、と冷えて固まった顔で睨みつけようとしたのだが――
フワリと私の首に巻かれた、暖かいマフラー。驚いて見上げると、そのマフラーの先は銀時の首にも巻かれていた。
「半分こ、な」
ニッと笑った銀時が、私の肩を抱き寄せる。
いつの間にか片袖を脱いでいた銀時のコートが私の肩にかけられ、信じられないほどの温もりに包まれた。
「マフラーとコート、それに銀さん。こんだけあればどんな寒さだってへっちゃらじゃねェ?」
自信ありげに言われてしまい、正直腹は立ったものの確かに凄く暖かくて。
「……まぁ、ね」
素直に口にすれば調子に乗ってしまうだろうと考えた私は、そう答えるに留めておいた。
「で? 結局依頼って何なの?」
悔しいけれど、銀時の熱でようやく体が温まり、すっかり忘れていた依頼の事を思い出した私は聞いた。
だって連れてこられたこの場所は、人気の無い森の中。遠くにターミナルとその周辺のイルミネーションが見えて綺麗だけれど、辺りは真っ暗だ。
「こんな所に来なきゃいけない依頼って何よ」
「それはだな。……ちょっと待ってろよ」
銀時が、珍しく付けていた腕時計を確認する。
「おっと、ギリギリじゃねェか! 1分前……30秒前……5、4、3、2、1……」
「〜〜っ!」
それは、不意打ちだった。
銀時がカウントダウンを始めたと同時に、もうすぐ年が明けるんだと言うことは分かっていたけれど、まさか……
「あけましておめでとう、詩織」
たった今まで私に触れていた唇が、新年の初めに紡いだ言葉。
「銀……」
「おいおい、銀さんがご丁寧な挨拶してるってのに、何も言ってくれねェの?」
「あの、その……あけましておめでとう……ございます……」
恥ずかしさと驚きとで頭が混乱する中、何とか言葉を絞り出した。
「ん」と満足そうに頷いた銀時は私の頭に手を置いて、優しく指に髪を絡ませる。
「これが依頼だよ」
「……はえ?」
恥ずかしさが一瞬で吹き飛ぶ意味不明な答えに、私は間抜けな声をあげてしまった。
「なんだよ『はえ』って」
「『はい?』と『え?』が混ざった時代の最先端の言葉なの!……そ、そんなことより、これの何処が依頼なのよっ」
自分でも無茶苦茶を言っているのは分かっていたけれど、自分の間抜けっぷりをごまかしたくて強引に話題をそらす。そんな私に苦笑いしながらも、銀時は答えた。
「夜景の綺麗な場所でカウントダウンして、新年をキスで迎える。詩織の夢だったんだろ?」
「……っ!」
驚きが大き過ぎて、言葉が出なかった。だってそれは間違いなく、私が密かに抱いていた夢だったから。
良い年して少女趣味だと笑われそうで、誰にも言った事はなかったはずなのに、何故銀時が知っているのか。
先ほどのキスに更なる恥ずかしさが加わり、私は顔を真っ赤にして言葉を失ったまま、銀時を見上げる事しか出来なかった。
そんな私に銀時が言う。
「夢が叶って良かったな」
いつもの魚が死んだような目とは程遠い、真剣な眼差しで私を見つめる銀時に、からかう素ぶりは無い。しかもその瞳の奥には不安の色が感じられて、戸惑った。
そして今に至っているのだが……。
出来るだけ暖かい格好をしては来たものの、既に歯の根が合わないほどに体が震えていた。
「……着いたぜ」
ようやく目的地に着いたものの、もう言葉を発するのも億劫なほどに体は冷え切っている。
私はノロノロとスクーターから降りると、無言のまま銀時の後を追って歩いた。そんな私を見て、苦笑いをする銀時。
「ほんっと詩織は寒がりだよな。……仕方ねェから、銀さんがあっためてやるよ」
悪びれもせず言う銀時に、誰のせいでこんな寒い思いをしてるんだ、と冷えて固まった顔で睨みつけようとしたのだが――
フワリと私の首に巻かれた、暖かいマフラー。驚いて見上げると、そのマフラーの先は銀時の首にも巻かれていた。
「半分こ、な」
ニッと笑った銀時が、私の肩を抱き寄せる。
いつの間にか片袖を脱いでいた銀時のコートが私の肩にかけられ、信じられないほどの温もりに包まれた。
「マフラーとコート、それに銀さん。こんだけあればどんな寒さだってへっちゃらじゃねェ?」
自信ありげに言われてしまい、正直腹は立ったものの確かに凄く暖かくて。
「……まぁ、ね」
素直に口にすれば調子に乗ってしまうだろうと考えた私は、そう答えるに留めておいた。
「で? 結局依頼って何なの?」
悔しいけれど、銀時の熱でようやく体が温まり、すっかり忘れていた依頼の事を思い出した私は聞いた。
だって連れてこられたこの場所は、人気の無い森の中。遠くにターミナルとその周辺のイルミネーションが見えて綺麗だけれど、辺りは真っ暗だ。
「こんな所に来なきゃいけない依頼って何よ」
「それはだな。……ちょっと待ってろよ」
銀時が、珍しく付けていた腕時計を確認する。
「おっと、ギリギリじゃねェか! 1分前……30秒前……5、4、3、2、1……」
「〜〜っ!」
それは、不意打ちだった。
銀時がカウントダウンを始めたと同時に、もうすぐ年が明けるんだと言うことは分かっていたけれど、まさか……
「あけましておめでとう、詩織」
たった今まで私に触れていた唇が、新年の初めに紡いだ言葉。
「銀……」
「おいおい、銀さんがご丁寧な挨拶してるってのに、何も言ってくれねェの?」
「あの、その……あけましておめでとう……ございます……」
恥ずかしさと驚きとで頭が混乱する中、何とか言葉を絞り出した。
「ん」と満足そうに頷いた銀時は私の頭に手を置いて、優しく指に髪を絡ませる。
「これが依頼だよ」
「……はえ?」
恥ずかしさが一瞬で吹き飛ぶ意味不明な答えに、私は間抜けな声をあげてしまった。
「なんだよ『はえ』って」
「『はい?』と『え?』が混ざった時代の最先端の言葉なの!……そ、そんなことより、これの何処が依頼なのよっ」
自分でも無茶苦茶を言っているのは分かっていたけれど、自分の間抜けっぷりをごまかしたくて強引に話題をそらす。そんな私に苦笑いしながらも、銀時は答えた。
「夜景の綺麗な場所でカウントダウンして、新年をキスで迎える。詩織の夢だったんだろ?」
「……っ!」
驚きが大き過ぎて、言葉が出なかった。だってそれは間違いなく、私が密かに抱いていた夢だったから。
良い年して少女趣味だと笑われそうで、誰にも言った事はなかったはずなのに、何故銀時が知っているのか。
先ほどのキスに更なる恥ずかしさが加わり、私は顔を真っ赤にして言葉を失ったまま、銀時を見上げる事しか出来なかった。
そんな私に銀時が言う。
「夢が叶って良かったな」
いつもの魚が死んだような目とは程遠い、真剣な眼差しで私を見つめる銀時に、からかう素ぶりは無い。しかもその瞳の奥には不安の色が感じられて、戸惑った。
