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可愛く満たして(銀時)

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 本当は、可愛い女の子になりたかった。
 でも銀ちゃんを目の前にすると、どうしても素直になれなくて。

「こんな時間までダラダラとしてんじゃないの!」

 そろそろサラリーマンならお昼休みが終わる頃。大急ぎで訪ねた万事屋で、だらしなくソファに横たわりながらジャンプを読んでいる銀ちゃんを怒鳴りつける。

「少しは働きなさいよね。新八くんと神楽ちゃんは?」

 そう言いながら持ってきた弁当箱をテーブルに置き、買ってきたイチゴ牛乳のパックを冷蔵庫に入れていると、銀ちゃんがゴソゴソと起き上がる気配がした。

「おっ、今日も美味そーじゃん」

 弁当箱の中身を確認したのだろう。嬉しそうな声を聞き、思わず顔がほころぶ。でもその表情を見せる気はない私は、強引に口元を引き締めると急いで駆け戻った。

「こら! 勝手に開けるんじゃないの!」
「え〜? 銀さんのために作ってくれたんだろ」
「それはそ……うだけどそうじゃない!」
「何だよそれ」

 呆れながらもおかずの唐揚げを摘み、ひょいと口に運ぶ銀ちゃん。

「だから待ちなさいってば!」

 慌てて銀ちゃんに飛びつき両頬を押さえつけたものの、モゴモゴと口を動かした銀ちゃんはあっさりと唐揚げを飲み込んでしまった。

「やっぱ美味いな、お前のメシ」

 ペロリと唇を舐め、「もう一個」と今度は卵焼きに手が伸びる。

「もう、待ちなさいってば……!」

 食べさせてなるものか、と素早くお弁当を取り上げると、銀ちゃんは不貞腐れながら言った。

「こっちは腹減ってんだよ。お登勢のババアが珍しく飯を奢ってやるっつってたのを俺だけ断って、お前が来んのを待ってたんだぜ」
「嘘……」

 驚いて固まった私の手から弁当箱を引ったくり、卵焼きを口に放り込んだ銀ちゃんは、幸せそうな顔をしながら次々と中をさらっていく。

「あー美味かった。ごっそさん」
 
 空になった弁当箱を重ねてそう言った銀ちゃんは、膨れ上がったお腹を叩きながら満足そうだった。

「いつも通り3人分あったのに……まさか一人で完食するとは……」
「さすがに多かったけどな。でもこんな美味いメシを残すなんてバチが当たらァ」
「銀ちゃん……」

 感動で、胸がいっぱいになる。でもその気持ちを素直に表現できるような可愛さは持ち合わせてないから。

「何よ。お上手言っちゃって。タダ飯万歳の下心見え見え!」

 ベーッと舌を出して可愛げのないセリフを吐くと、何故か銀ちゃんは呆れたように言った。

「最初から分かってながら、毎日手間暇かけて作ってくれてるんでしょーが」

 そう言って私の頭をポンポンと叩いた銀ちゃんは、ニヤリと意地悪な笑みを見せる。

「ほーんと可愛いよな、お前。どんだけ銀さんの事好きなのよ」
「は……はぁぁっ!?」

 突然の言葉に、頭がパニック状態だ。
 可愛い? 好き? 誰が? なんでっ!?

「わ、わわわ私は可愛くなんてないし、好きとか別に……っ」
「十分可愛いと思うぜ。今だってこーんな真っ赤な顔して慌てちまっててよ。誰が見たって『銀さん大好き』ってのが丸分かりだっつーの」

 ククッと喉で笑い、私の頭をグイッと胸元に引き寄せた銀ちゃんは、からかうように言った。

詩織は可愛い。すげー可愛い」
「……っ!」
「とにかく可愛い。今すぐここで食っちまいたいくらい可愛い」
「ばっ……バカな事言わないでっ! 私なんて美味しくないもんっ!」

 そう私が叫んだ瞬間、不意に空気が変わる。ハッとした時にはもう、私の目の前数センチのところに、銀ちゃんの顔があった。

「少しは自分に自信持てっつーの」

 それは、先ほどまでとは全く違う、真剣な表情と声。
 まさかの展開に驚いて頭の中が真っ白になってしまった私に、更に顔を近付けた銀ちゃんは言った。

詩織は間違いなく可愛いし美味いぜ。何なら今ここでそれを証明してやろうか?」
「証明……? そんなのどうやって……」
「簡単じゃねェか。銀さんが完食するか否かって事だよ」
「何よそれ、意味分か……」

 頬に銀ちゃんの吐息を感じ、口をつぐむ。
 焦点が合わないほど間近にある銀ちゃんの目が私の目を閉じさせると、消え入りそうに小さい「もう我慢しなくて良いよな」の言葉と共に、少しだけ震えている柔らかな熱が私の唇を覆いーー。



「今まで詩織がくれたモンの中で、一番美味かった。ごっそーさん」

 結局お代わりまでした銀ちゃんによって、見事私は完食されてしまったのだった。

〜了〜
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