cigarette love(土方)
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【君を、求めて】
「最近副長のタバコの量、減りましたよね」
監察の山崎さんに言われ、私は小さく頷く。
見た目はいつもと変わらずトレードマークのタバコを口に咥えてはいるが、実は火の点いてない事が多かった。
「以前は副長室に行くと部屋中真っ白だったのに、ここ数日は全景を見る事ができるんですよ。タバコ以外の趣味なりストレス解消法なりを見つけたんでしょうか?」
不思議そうに首を傾げ、でも私の顔色を伺うように視線を向けてくる山崎さんに、私は「さぁ、どうなんでしょう?」と完璧な笑顔を向けて返す。その態度に、これ以上の問答は不可能だと判断したのか、山崎さんは私に書類を渡すとその場を去っていった。
そして私はと言うと、そのまま山崎さんに渡された書類を持ち、副長室へと向かう。
「詩織です。今宜しいですか?」
「おう、入れ」
「失礼します」
襖を開けて中を見れば、確かに室内の空気は以前と比べれば澄んでいる。灰皿の中の吸い殻も、今日が半日終わったにも関わらず、数える程しか入ってはいなかった。
「山崎さんからの報告書です。目を通して頂けますか?」
「分かった」
自然な流れで書類を受け取り、内容を確認した副長はいつものようにサインをして私に返す。「では」とこれまたいつものように部屋を出ようとするとーー。
「詩織」
名を呼ばれ、肩に手が置かれた。何も言わずにゆっくりと振り向いた時にはもう、副長の顔が目の前にある。
そこから先に言葉は無かった。
副長の指が私の顎を軽く掴んで固定する。絡んだ視線は自然と私の目を閉じさせた。頬に吐息を感じてほんの少し口を開けば、食むように重ねられる唇。それは普段鬼と呼ばれている男とは思えない程に、とても優しい口付けだった。
やがて副長の唇が離れ、そのまま抱きしめられた私は腕の中で問う。
「随分数を減らしたんですね、タバコ。何か心境の変化でも?」
我ながら意地悪な質問だとは思いながらも、私は答えを待った。そんな私の心の内を読んでいたのだろう。先日私から取り上げたシガレットケースを懐から取り出して言った。
「別に何も変わっちゃいねェよ。ただ何となくこいつの中身を減らしたくなかったのと……」
そこまで言った彼に促され、上を向いた私の目に飛び込んできたのは、普段決して見ることのできない柔らかな微笑みだった。
「タバコよりも美味いモンを見つけちまっただけだ」
そして再び重ねられた唇の隙間から、今度は舌が差し込まれる。それは副長の熱だけでなく微かなタバコの香りとハッカの味を伴いながら、私の体に甘い痺れを走らせた。
〜了〜
「最近副長のタバコの量、減りましたよね」
監察の山崎さんに言われ、私は小さく頷く。
見た目はいつもと変わらずトレードマークのタバコを口に咥えてはいるが、実は火の点いてない事が多かった。
「以前は副長室に行くと部屋中真っ白だったのに、ここ数日は全景を見る事ができるんですよ。タバコ以外の趣味なりストレス解消法なりを見つけたんでしょうか?」
不思議そうに首を傾げ、でも私の顔色を伺うように視線を向けてくる山崎さんに、私は「さぁ、どうなんでしょう?」と完璧な笑顔を向けて返す。その態度に、これ以上の問答は不可能だと判断したのか、山崎さんは私に書類を渡すとその場を去っていった。
そして私はと言うと、そのまま山崎さんに渡された書類を持ち、副長室へと向かう。
「詩織です。今宜しいですか?」
「おう、入れ」
「失礼します」
襖を開けて中を見れば、確かに室内の空気は以前と比べれば澄んでいる。灰皿の中の吸い殻も、今日が半日終わったにも関わらず、数える程しか入ってはいなかった。
「山崎さんからの報告書です。目を通して頂けますか?」
「分かった」
自然な流れで書類を受け取り、内容を確認した副長はいつものようにサインをして私に返す。「では」とこれまたいつものように部屋を出ようとするとーー。
「詩織」
名を呼ばれ、肩に手が置かれた。何も言わずにゆっくりと振り向いた時にはもう、副長の顔が目の前にある。
そこから先に言葉は無かった。
副長の指が私の顎を軽く掴んで固定する。絡んだ視線は自然と私の目を閉じさせた。頬に吐息を感じてほんの少し口を開けば、食むように重ねられる唇。それは普段鬼と呼ばれている男とは思えない程に、とても優しい口付けだった。
やがて副長の唇が離れ、そのまま抱きしめられた私は腕の中で問う。
「随分数を減らしたんですね、タバコ。何か心境の変化でも?」
我ながら意地悪な質問だとは思いながらも、私は答えを待った。そんな私の心の内を読んでいたのだろう。先日私から取り上げたシガレットケースを懐から取り出して言った。
「別に何も変わっちゃいねェよ。ただ何となくこいつの中身を減らしたくなかったのと……」
そこまで言った彼に促され、上を向いた私の目に飛び込んできたのは、普段決して見ることのできない柔らかな微笑みだった。
「タバコよりも美味いモンを見つけちまっただけだ」
そして再び重ねられた唇の隙間から、今度は舌が差し込まれる。それは副長の熱だけでなく微かなタバコの香りとハッカの味を伴いながら、私の体に甘い痺れを走らせた。
〜了〜
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