浪士と警察(総悟)
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【立ち止まるのも悪くない】
思い立ったら一直線。俺のいる真選組には、そんなバカな奴らしか居ない。
いつだって前を向き、信じるものに向かって走り続けるのだ。例えそれが、どんなに滑稽だとしても。
「諦めの悪い男ね」
今日もまた、巡察の途中に詩織を訪ねる。
「攘夷浪士の情報をもらいに来やした」
「本日も何も無し。以上!」
「そんじゃ、俺の事をどれだけの時間考えてましたかね?」
「今顔を合わせて初めて思い出したわよ。ってなわけで、数秒」
「上出来。あの濃厚なチューの日以降、3回も完全スルーされやしたからね」
「あ……っ! あんなのはキスじゃないし! もう、せっかく忘れようとしてるのに、何度もキミが訪ねてくるから……」
「へェ、忘れようとしてたんですかィ。そいつァ困りやすね。何の為に連日通ってんだか分からなくなっちまわァ」
そう言って俺は詩織の顎を摘み、クイと上を向かせる。まだ一度しか味わえていない唇はとても美味そうだった。
ーーが、そこに小さな震えを感じ、食らいつくのを躊躇う。
「……そんなに俺が怖ェのかよ」
そうポソリと呟いた俺は、詩織から手を離して言った。
「次からは……別の隊士に来させまさァ」
ほんの少し胸が痛むが、きっとそれは気のせいだ。俺が原因で情報を吐かないってんなら、他の奴を動かせば良い。俺はただ真選組の為に前に進むだけ。だからーー。
「じゃ、そういう事で」
踵を返して歩き出した時、後ろから聞こえた小さな声に、俺は思わず立ち止まって振り向く。
「怖くて当然じゃない。忘れられないんだもの……」
そこには、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに手を唇に当てている詩織の姿があった。
いつだって前に向かって走り続けていたけれど、こうして立ち止まる事でしか見えない物があるんだなァ。
存外、立ち止まるのも悪くない。
俺は暫くその場から動かず、詩織を見つめ続けた。
恥ずかしさで「もう、見ないでよ!」と怒った詩織が逃げ出そうとする瞬間まで。
〜了〜
思い立ったら一直線。俺のいる真選組には、そんなバカな奴らしか居ない。
いつだって前を向き、信じるものに向かって走り続けるのだ。例えそれが、どんなに滑稽だとしても。
「諦めの悪い男ね」
今日もまた、巡察の途中に詩織を訪ねる。
「攘夷浪士の情報をもらいに来やした」
「本日も何も無し。以上!」
「そんじゃ、俺の事をどれだけの時間考えてましたかね?」
「今顔を合わせて初めて思い出したわよ。ってなわけで、数秒」
「上出来。あの濃厚なチューの日以降、3回も完全スルーされやしたからね」
「あ……っ! あんなのはキスじゃないし! もう、せっかく忘れようとしてるのに、何度もキミが訪ねてくるから……」
「へェ、忘れようとしてたんですかィ。そいつァ困りやすね。何の為に連日通ってんだか分からなくなっちまわァ」
そう言って俺は詩織の顎を摘み、クイと上を向かせる。まだ一度しか味わえていない唇はとても美味そうだった。
ーーが、そこに小さな震えを感じ、食らいつくのを躊躇う。
「……そんなに俺が怖ェのかよ」
そうポソリと呟いた俺は、詩織から手を離して言った。
「次からは……別の隊士に来させまさァ」
ほんの少し胸が痛むが、きっとそれは気のせいだ。俺が原因で情報を吐かないってんなら、他の奴を動かせば良い。俺はただ真選組の為に前に進むだけ。だからーー。
「じゃ、そういう事で」
踵を返して歩き出した時、後ろから聞こえた小さな声に、俺は思わず立ち止まって振り向く。
「怖くて当然じゃない。忘れられないんだもの……」
そこには、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに手を唇に当てている詩織の姿があった。
いつだって前に向かって走り続けていたけれど、こうして立ち止まる事でしか見えない物があるんだなァ。
存外、立ち止まるのも悪くない。
俺は暫くその場から動かず、詩織を見つめ続けた。
恥ずかしさで「もう、見ないでよ!」と怒った詩織が逃げ出そうとする瞬間まで。
〜了〜
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