浪士と警察(総悟)
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【引き際】
先日取り逃がした攘夷浪士のあの女。
もう二度と会えないかと思っていたが、意外や意外。数日後には再会を果たしていた。
それも、ごく平凡な公園で。
俺と刃を交えた時とは打って変わって、穏やかな笑顔で公園を歩く詩織の傍には、小さな子供がいた。
「コブ付きだったのか。さすがにガキの前で捕縛すんのは胸糞悪ィな」
そう呟きながらしばらく様子を見ていると、何故かあちこちからワラワラとガキが近付いてくる。
「……大家族?」
呆気に取られていた俺の存在に、詩織は気付いたようだ。ガキ共に一声かけると、自らこちらに歩み寄ってきた。
「先に言っておくけど、私の子供じゃ無いわよ」
「だろうな。そんな玉には見えねェし」
「どういう意味よ。……あの子達の親は、皆攘夷浪士」
「へェ、お仲間のガキですかィ」
「誰一人、もう親には会えないけどね」
「……っ」
その意味を理解して言葉を失った俺に、詩織は言った。
「私はあの子達の後見人のようなものよ。そして私は攘夷浪士では無い。でも同じような状況になった子が出てきたら、その時だけは連絡を取って子供を引き取ってるの。それが坊やと戦った日」
言われてみればあの日、捕縛された者の中にはガキも含まれていた気がする。俺はすぐに現場を離れてしまい、後の事は山崎に任せていたが、確か保護していたはずだ。
「そういう訳だから、私を捕らえても無駄よ。繋がりはあくまで子供だけであって、活動の情報は一切聞かない聞かせないって約束だから」
「だが、連絡は取れるんだろう? だったらアンタに連絡先を吐かせりゃ良い」
「残念ながら、向こうからの一方的な連絡のみで、私は何も知らないわ。悪いけど諦めてよね。こういう時は引き際が肝心よ」
「テメェ……」
慣れたウインクに続いて小馬鹿にしたように出された舌は、俺の心をざわつかせ、苛立たせる。
この俺をコケにするたァ、良い度胸じゃねェか。それならこっちにもやり方があるってんだよ。
「悪ィが俺は諦めが悪いんでね。今後は本格的に張り付かせてもらいやす」
詩織の舌が隠れ切る直前、ペロリと舐めながら唇を塞いでやる。驚きで目を見開いた詩織に、してやったりの快感を覚えながら俺は言ってやった。
「絶対に攘夷浪士たちも、アンタの心も捕まえてやりまさァ」
〜了〜
先日取り逃がした攘夷浪士のあの女。
もう二度と会えないかと思っていたが、意外や意外。数日後には再会を果たしていた。
それも、ごく平凡な公園で。
俺と刃を交えた時とは打って変わって、穏やかな笑顔で公園を歩く詩織の傍には、小さな子供がいた。
「コブ付きだったのか。さすがにガキの前で捕縛すんのは胸糞悪ィな」
そう呟きながらしばらく様子を見ていると、何故かあちこちからワラワラとガキが近付いてくる。
「……大家族?」
呆気に取られていた俺の存在に、詩織は気付いたようだ。ガキ共に一声かけると、自らこちらに歩み寄ってきた。
「先に言っておくけど、私の子供じゃ無いわよ」
「だろうな。そんな玉には見えねェし」
「どういう意味よ。……あの子達の親は、皆攘夷浪士」
「へェ、お仲間のガキですかィ」
「誰一人、もう親には会えないけどね」
「……っ」
その意味を理解して言葉を失った俺に、詩織は言った。
「私はあの子達の後見人のようなものよ。そして私は攘夷浪士では無い。でも同じような状況になった子が出てきたら、その時だけは連絡を取って子供を引き取ってるの。それが坊やと戦った日」
言われてみればあの日、捕縛された者の中にはガキも含まれていた気がする。俺はすぐに現場を離れてしまい、後の事は山崎に任せていたが、確か保護していたはずだ。
「そういう訳だから、私を捕らえても無駄よ。繋がりはあくまで子供だけであって、活動の情報は一切聞かない聞かせないって約束だから」
「だが、連絡は取れるんだろう? だったらアンタに連絡先を吐かせりゃ良い」
「残念ながら、向こうからの一方的な連絡のみで、私は何も知らないわ。悪いけど諦めてよね。こういう時は引き際が肝心よ」
「テメェ……」
慣れたウインクに続いて小馬鹿にしたように出された舌は、俺の心をざわつかせ、苛立たせる。
この俺をコケにするたァ、良い度胸じゃねェか。それならこっちにもやり方があるってんだよ。
「悪ィが俺は諦めが悪いんでね。今後は本格的に張り付かせてもらいやす」
詩織の舌が隠れ切る直前、ペロリと舐めながら唇を塞いでやる。驚きで目を見開いた詩織に、してやったりの快感を覚えながら俺は言ってやった。
「絶対に攘夷浪士たちも、アンタの心も捕まえてやりまさァ」
〜了〜