浪士と警察(総悟)
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【美しく汚れて】
その女は、いつものように隊士達を引き連れ、御用改めで乗り込んだ屋敷の中にいた。
「攘夷浪士ってなァ、女まで前線に出すんですかィ?」
こっちは女を避けて浪士どもを斬ってやってるってのに、わざわざ白刃の下にその身を晒す女は、実は相当の手練れだったらしい。
綺麗な面が美しく汚れていく様は凄惨ではあったが、その全てが返り血だ。拭ってしまえば傷一つない事には、正直驚かされた。
「バカにしないでよね。少なくとも坊やより腕はあるわよ」
大して見た目の変わらないこの女が、俺を子供扱いしてくる事に腹が立つ。
「言ってくれやすねェ。そんじゃその腕、見せてもらいやしょうか」
確かに平隊士には荷が重い相手だろう。だが隊長クラスの俺ならーー。
「戦いは、剣の腕だけじゃダメ。経験と覚悟だって必要よ。もちろん逃げる勇気もね」
たった数回刃を交えただけでさっさと踵を返し、逃げ去る女の思い切りの良さに、思わず動きが鈍る。
「じゃあね、真選組の坊や」
あっという間に姿を消してしまった女は、結局取り逃がしてしまった。
苛立ちを隠せぬまま、捕縛した浪士に女の名を吐かせる。
「……詩織、か。次に会った時は覚えてやがれ」
女の名はそれ以降、俺の中に深く刻み込まれた。
〜了〜
その女は、いつものように隊士達を引き連れ、御用改めで乗り込んだ屋敷の中にいた。
「攘夷浪士ってなァ、女まで前線に出すんですかィ?」
こっちは女を避けて浪士どもを斬ってやってるってのに、わざわざ白刃の下にその身を晒す女は、実は相当の手練れだったらしい。
綺麗な面が美しく汚れていく様は凄惨ではあったが、その全てが返り血だ。拭ってしまえば傷一つない事には、正直驚かされた。
「バカにしないでよね。少なくとも坊やより腕はあるわよ」
大して見た目の変わらないこの女が、俺を子供扱いしてくる事に腹が立つ。
「言ってくれやすねェ。そんじゃその腕、見せてもらいやしょうか」
確かに平隊士には荷が重い相手だろう。だが隊長クラスの俺ならーー。
「戦いは、剣の腕だけじゃダメ。経験と覚悟だって必要よ。もちろん逃げる勇気もね」
たった数回刃を交えただけでさっさと踵を返し、逃げ去る女の思い切りの良さに、思わず動きが鈍る。
「じゃあね、真選組の坊や」
あっという間に姿を消してしまった女は、結局取り逃がしてしまった。
苛立ちを隠せぬまま、捕縛した浪士に女の名を吐かせる。
「……詩織、か。次に会った時は覚えてやがれ」
女の名はそれ以降、俺の中に深く刻み込まれた。
〜了〜
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