言葉の裏に潜む想いを(銀時)
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「好きだ」
私はこの言葉を、銀時の口から聞いた事は一度もない。
何となく出会い、何となく「付き合っちゃう?」なノリで付き合い始めたのは確かだが、深い関係になったにも関わらず、未だ一度も言葉にしてくれてはいないのだ。
「ねぇ銀時。私のことどう思ってるの?」
「あん?何だよ今更。んな事よりさァ……」
私が聞いてもいつもこうして流され、話を変えられてしまう。
強引に話を戻そうとしても、キスで誤魔化されたり、これ以上聞くことのできない雰囲気に持っていかれてしまっていた。
そんな関係が続いて、半年が過ぎ。
さすがに私の心にも限界が来る。
たった一言、「好き」という言葉を聞かせてくれるだけで良いのに。
それが無いままこの関係を続けるのにはもう、疲れた。
そうでなくても銀時には女友達も多く、いつだってやきもきしているのだ。私の目の前で、楽しそうに女友達と会話する銀時を横目に、愛想笑いし続けるなんて出来ない。
「ねぇ銀時。私のことどう思ってるの?」
これが最後だと思い、私はいつものように尋ねた。
「まァたそれかよ。今更そんなの聞くなっての。それよか今日は……」
やはりいつもと同じように話を逸らす銀時。こうなる事は分かってたものの、悲しいと思う気持ちを抑える事は出来ない。
小さくため息をついた私は、滲む視界の向こうにいる銀時に向けて言った。
「別れよっか」
「……へ?」
間の抜けた声をあげる銀時に、もう一度言う。
「別れよう。今までありがとね」
「な、何?急に何言い出すんだよ、詩織」
「急じゃ無いよ、ずっと考えてた。私は自分を好きだと感じさせてくれる人じゃなきゃ、不安でたまらないの。こんな重い女、銀時には邪魔になるだけだから……」
いきなり言われた事への驚きからか、目を見開いて私を見ている銀時。その顔は、いつものふざけた物では無く、心底傷付いているようにも見えた。
でも、もう私には関係のない話。
「さよなら」
そう言って踵を返した私は、振り向く事なく歩き出す。
ひょっとして呼び止めてくれるかも、と期待しなかったわけじゃない。でも歩みを止めようとは思わなかった。
恋の終わりなんて、呆気ない物だなぁ……なんて事を考えながら一人涙を零しつつ歩いていると、不意に後ろから抱きしめられる。
振り向かずともこの腕は、誰の物かが分かってしまうのが悲しかった。
「……行くな」
「それこそ今更、だよ。ずっと私は気持ちを伝えてたのに、答えてくれなかったのは銀時じゃない」
ここでもう一度やり直してみたところで、結局は同じことの繰り返しだ。希望のないやり直しなんて、私には出来ない。
「私じゃダメだったんだよ。銀時が『好き』と言える人、いつか見つけてね」
自分で言ってて悲しかったけど、これが現実だから。抱きしめてくる腕をそっと解きながら私は言った。
ところが、その腕はもっと強い力で私を抱きしめようとする。
「銀時?」
「……好きじゃねェよ」
静かに耳元で言われた言葉が、棘のように胸に突き刺さった。
痛みと悲しみで、体の震えが止まらない。
「そ……なんだ……」
言葉が見つからず、何とか絞り出せた声も震えてしまっている。
そんな私に、銀時は言った。
「『好き』なんかじゃ足りねェんだっての!そんくらい分かれよコノヤロー!」
怒鳴るように言われ、驚いて振り向いた私が見たものは、顔を真っ赤にして私を見ている銀時だった。
「お前にそんな悲しい思いをさせちまった俺が悪ィのは分かってるけど、んな簡単に言えるわけねーだろ。あ……愛してる……だなんて……ッ」
今まで見た事のない真剣な眼差しは、間違いなく私を想ってくれていることを伝えてくる。
しかも『好き』どころか『愛』と言う想像もしていなかった言葉まで紡がれていて。
「銀時!」
あまりの嬉しさに、私は銀時に抱きついた。
「ごめんね、銀時。私、自分の事ばかりで……銀時の気持ちに気付けてなくて……」
「分かりゃ良いんだよ。……もう別れるなんて言うなよな。銀さんショックで寝込んじまいそうだったわ」
恥ずかしさを誤魔化すように、いつも通りのふざけた態度を見せる銀時。
どうしてこれが、照れ臭さを隠すための手段だったと気付けなかったのか。心底自分が情けなかった。
「うん、もう言わない。私はずっと銀時のそばにいるから」
「ああ」
誓いを立てるように、唇を重ねる。いつもより深い口付けが銀時の想いを私の中へと流し込んでくるようで、心が満たされていった。
「そういや詩織は、俺のことどう思ってんだよ。俺の気持ちを聞くばっかで、お前の気持ちを聞いちゃいねーぞ」
唇を離した銀時が、少し拗ねた顔で私に尋ねる。
それがとても愛おしく思えた私は、小さく吹き出しながらも万感の想いを込めて、こう答えたのだった。
「もちろん……愛してるよ」
〜了〜
私はこの言葉を、銀時の口から聞いた事は一度もない。
何となく出会い、何となく「付き合っちゃう?」なノリで付き合い始めたのは確かだが、深い関係になったにも関わらず、未だ一度も言葉にしてくれてはいないのだ。
「ねぇ銀時。私のことどう思ってるの?」
「あん?何だよ今更。んな事よりさァ……」
私が聞いてもいつもこうして流され、話を変えられてしまう。
強引に話を戻そうとしても、キスで誤魔化されたり、これ以上聞くことのできない雰囲気に持っていかれてしまっていた。
そんな関係が続いて、半年が過ぎ。
さすがに私の心にも限界が来る。
たった一言、「好き」という言葉を聞かせてくれるだけで良いのに。
それが無いままこの関係を続けるのにはもう、疲れた。
そうでなくても銀時には女友達も多く、いつだってやきもきしているのだ。私の目の前で、楽しそうに女友達と会話する銀時を横目に、愛想笑いし続けるなんて出来ない。
「ねぇ銀時。私のことどう思ってるの?」
これが最後だと思い、私はいつものように尋ねた。
「まァたそれかよ。今更そんなの聞くなっての。それよか今日は……」
やはりいつもと同じように話を逸らす銀時。こうなる事は分かってたものの、悲しいと思う気持ちを抑える事は出来ない。
小さくため息をついた私は、滲む視界の向こうにいる銀時に向けて言った。
「別れよっか」
「……へ?」
間の抜けた声をあげる銀時に、もう一度言う。
「別れよう。今までありがとね」
「な、何?急に何言い出すんだよ、詩織」
「急じゃ無いよ、ずっと考えてた。私は自分を好きだと感じさせてくれる人じゃなきゃ、不安でたまらないの。こんな重い女、銀時には邪魔になるだけだから……」
いきなり言われた事への驚きからか、目を見開いて私を見ている銀時。その顔は、いつものふざけた物では無く、心底傷付いているようにも見えた。
でも、もう私には関係のない話。
「さよなら」
そう言って踵を返した私は、振り向く事なく歩き出す。
ひょっとして呼び止めてくれるかも、と期待しなかったわけじゃない。でも歩みを止めようとは思わなかった。
恋の終わりなんて、呆気ない物だなぁ……なんて事を考えながら一人涙を零しつつ歩いていると、不意に後ろから抱きしめられる。
振り向かずともこの腕は、誰の物かが分かってしまうのが悲しかった。
「……行くな」
「それこそ今更、だよ。ずっと私は気持ちを伝えてたのに、答えてくれなかったのは銀時じゃない」
ここでもう一度やり直してみたところで、結局は同じことの繰り返しだ。希望のないやり直しなんて、私には出来ない。
「私じゃダメだったんだよ。銀時が『好き』と言える人、いつか見つけてね」
自分で言ってて悲しかったけど、これが現実だから。抱きしめてくる腕をそっと解きながら私は言った。
ところが、その腕はもっと強い力で私を抱きしめようとする。
「銀時?」
「……好きじゃねェよ」
静かに耳元で言われた言葉が、棘のように胸に突き刺さった。
痛みと悲しみで、体の震えが止まらない。
「そ……なんだ……」
言葉が見つからず、何とか絞り出せた声も震えてしまっている。
そんな私に、銀時は言った。
「『好き』なんかじゃ足りねェんだっての!そんくらい分かれよコノヤロー!」
怒鳴るように言われ、驚いて振り向いた私が見たものは、顔を真っ赤にして私を見ている銀時だった。
「お前にそんな悲しい思いをさせちまった俺が悪ィのは分かってるけど、んな簡単に言えるわけねーだろ。あ……愛してる……だなんて……ッ」
今まで見た事のない真剣な眼差しは、間違いなく私を想ってくれていることを伝えてくる。
しかも『好き』どころか『愛』と言う想像もしていなかった言葉まで紡がれていて。
「銀時!」
あまりの嬉しさに、私は銀時に抱きついた。
「ごめんね、銀時。私、自分の事ばかりで……銀時の気持ちに気付けてなくて……」
「分かりゃ良いんだよ。……もう別れるなんて言うなよな。銀さんショックで寝込んじまいそうだったわ」
恥ずかしさを誤魔化すように、いつも通りのふざけた態度を見せる銀時。
どうしてこれが、照れ臭さを隠すための手段だったと気付けなかったのか。心底自分が情けなかった。
「うん、もう言わない。私はずっと銀時のそばにいるから」
「ああ」
誓いを立てるように、唇を重ねる。いつもより深い口付けが銀時の想いを私の中へと流し込んでくるようで、心が満たされていった。
「そういや詩織は、俺のことどう思ってんだよ。俺の気持ちを聞くばっかで、お前の気持ちを聞いちゃいねーぞ」
唇を離した銀時が、少し拗ねた顔で私に尋ねる。
それがとても愛おしく思えた私は、小さく吹き出しながらも万感の想いを込めて、こう答えたのだった。
「もちろん……愛してるよ」
〜了〜
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