Trick or treat.(土方)
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その日、街はハロウィンの仮装で賑わっていた。
「私も参加してみたい」と言って聞かないそよ姫の護衛として駆り出された土方も、隊服の上から王子様風のマントをかけられ、中途半端に仮装をさせられている。当のそよ姫は、神楽と一緒にDの国のプリンセス姿ではしゃいでした。
「ったく、こういうのは俺よりも、もっと適任がいるんじゃねェのか? 吉沢総悟とか……」
これだけ激しい人混みの中ではタバコを吸うことも許されず、イライラばかりが募ってしまう。だが不機嫌な顔でそよ姫と神楽の後ろを歩いてはいながらも、いつもは城の中に閉じ込められているそよ姫が神楽と楽しそうにしている姿を見てしまえば、流石の土方も何も言えない。
「……まあ、たまには羽を伸ばさせてやらねェとな……」
そう言ってはぁっと一つ大きなため息を吐いた土方は、街の明かりで星が見えなくなっている夜空を見上げた。
と、その時。
「誰だっ!?」
不穏な気配を感じ、咄嗟にそよ姫の前に立つ。側にいた神楽も何かを感じたのか、いつでもその場を逃げ出せるようにとそよ姫の腕を掴んだ。そこに勢いよく飛び込んできたのは――。
「トリックオアトリートッ!」
「げっ!」
土方の真上から落ちてきた、一人の女。思わず刀を抜きそうになったのを慌てて止め、受け止めようと両腕を伸ばした土方に向けてにこりと笑みを見せた女は、その腕に触れる事もなく軽やかに着地した。
「詩織、テメェ……っ!」
「何よ、自分が勝手に驚いてオタオタしてただけでしょ」
ベぇっと舌を出し、怒る土方を華麗にスルーした詩織と呼ばれた女は、そよ姫たちの前に立った。
「お久しぶりです。姫さま、神楽ちゃん」
「まあ詩織。見廻組もお仕事なんですの?」
「ちょっとした事件が起きまして。今あちらの方で少年探偵が謎解きをしてるので、その隙に抜けてきました」
「詩織、それ作品違うネ」
「あれ? そうだっけ。ま、兎にも角にもハッピーハロウィン!」
神楽のツッコミにあははと笑いながら詩織が差し出したのは、ジャックオランタンのバケツ一杯に入ったお菓子。思わず目をキラキラさせて受け取る二人を見て、詩織の笑みは深まった。
そしてキャッキャと嬉しそうに中身を確認する二人を横目に、今度は土方の前で両手を差し出す。
「土方くん、トリックオアトリート!」
「あん? 何だよその手は。俺が菓子なんざ持ってるはずねェだろ」
何馬鹿な事言ってんだと呆れ顔で言う土方。そんな彼に、詩織は唇を尖らせた。
「え〜、お菓子くれないの? だったらイタズラしちゃうぞ」
「お前なァ、子供じゃねェんだから……」
そこまで言った土方の言葉が続かなかったのは、目の前の詩織の顔が不意に真剣な物となったから。
「子供じゃないなら、大人のイタズラにすれば……良いよね」
ほんの一瞬触れただけの甘やかなキスは、二人の頬を鮮やかに染め上げた。
~了~
「私も参加してみたい」と言って聞かないそよ姫の護衛として駆り出された土方も、隊服の上から王子様風のマントをかけられ、中途半端に仮装をさせられている。当のそよ姫は、神楽と一緒にDの国のプリンセス姿ではしゃいでした。
「ったく、こういうのは俺よりも、もっと適任がいるんじゃねェのか? 吉沢総悟とか……」
これだけ激しい人混みの中ではタバコを吸うことも許されず、イライラばかりが募ってしまう。だが不機嫌な顔でそよ姫と神楽の後ろを歩いてはいながらも、いつもは城の中に閉じ込められているそよ姫が神楽と楽しそうにしている姿を見てしまえば、流石の土方も何も言えない。
「……まあ、たまには羽を伸ばさせてやらねェとな……」
そう言ってはぁっと一つ大きなため息を吐いた土方は、街の明かりで星が見えなくなっている夜空を見上げた。
と、その時。
「誰だっ!?」
不穏な気配を感じ、咄嗟にそよ姫の前に立つ。側にいた神楽も何かを感じたのか、いつでもその場を逃げ出せるようにとそよ姫の腕を掴んだ。そこに勢いよく飛び込んできたのは――。
「トリックオアトリートッ!」
「げっ!」
土方の真上から落ちてきた、一人の女。思わず刀を抜きそうになったのを慌てて止め、受け止めようと両腕を伸ばした土方に向けてにこりと笑みを見せた女は、その腕に触れる事もなく軽やかに着地した。
「詩織、テメェ……っ!」
「何よ、自分が勝手に驚いてオタオタしてただけでしょ」
ベぇっと舌を出し、怒る土方を華麗にスルーした詩織と呼ばれた女は、そよ姫たちの前に立った。
「お久しぶりです。姫さま、神楽ちゃん」
「まあ詩織。見廻組もお仕事なんですの?」
「ちょっとした事件が起きまして。今あちらの方で少年探偵が謎解きをしてるので、その隙に抜けてきました」
「詩織、それ作品違うネ」
「あれ? そうだっけ。ま、兎にも角にもハッピーハロウィン!」
神楽のツッコミにあははと笑いながら詩織が差し出したのは、ジャックオランタンのバケツ一杯に入ったお菓子。思わず目をキラキラさせて受け取る二人を見て、詩織の笑みは深まった。
そしてキャッキャと嬉しそうに中身を確認する二人を横目に、今度は土方の前で両手を差し出す。
「土方くん、トリックオアトリート!」
「あん? 何だよその手は。俺が菓子なんざ持ってるはずねェだろ」
何馬鹿な事言ってんだと呆れ顔で言う土方。そんな彼に、詩織は唇を尖らせた。
「え〜、お菓子くれないの? だったらイタズラしちゃうぞ」
「お前なァ、子供じゃねェんだから……」
そこまで言った土方の言葉が続かなかったのは、目の前の詩織の顔が不意に真剣な物となったから。
「子供じゃないなら、大人のイタズラにすれば……良いよね」
ほんの一瞬触れただけの甘やかなキスは、二人の頬を鮮やかに染め上げた。
~了~
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