Trick or treat.(銀時)
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口の中の飴は、もうとっくにきれいさっぱり無くなっちまってる。それでも余韻を楽しみたくて、暫くは水を飲むのも躊躇われた。
「ちっとばかし強引だったよな」
公園で、苦手な味の飴を食べながら困っていた顔が可愛くて。代わりに食べてやると言う無理やりな理由を付けて、キスをした。
ずっと側にいながらも、まだ一度もお互いの気持ちなんざ確認した事は無い。俺自身の心は分かっていても、詩織が俺をどう思っているかを知るのは怖かったから。
「……くそっ!」
行動に移してしまえば、今までの関係は崩れてしまうかもしれないと分かっていたはずなのに。だが、今更後悔しても遅い。
「さり気なく『大好き』っつってみたけど、アイツの事だから気付いてねェんだろうな」
詩織と別れ、姿が見えなくなってから出てくるのは大きなため息ばかり。
「明日からどんな顔して詩織に会えば良いんだよ」
机の上に置いた、詩織から奪うようにして持ち帰った飴の袋を見ながら、俺は頭を抱えるしか無かった。
そして、翌日。
「トリックオアトリート!」
「へ?……うわっ!」
来客に気付き、玄関の戸を開けた途端、飛びついて来たのは詩織。少しだけ怒った表情の詩織は、尻もちをついた俺の膝に座り、まっすぐに見つめて来た。
「ハロウィンは今日だよ。昨日の呪文は無効だからね」
「え? あ、はい……」
言われてみれば、確かに今日がハロウィン当日だ。でも正直なところ、俺にはハロウィンなんてモンはどうでも良くて。ただ詩織が俺をどう思っているのかだけが気になっていた。
「トリックオアトリート! ねぇ、答えてよ」
「いや、答えろっつったって、菓子なんて置いてねーぞ」
「それじゃ、イタズラで良いよね?」
そう言った詩織は、俺の顔を両手でガッシリと挟み込む。何がしたいのかが分からず、ただ固まっていた俺に顔を近付けてきた詩織は、鼻先がくっつきそうな程に近付いて一旦止まった。しかも「やっぱ怖い」と呟いたその顔は何故か泣きそうだ。それでも意を決したようにギュッと目を瞑ると、俺の頬に口付けた。
「詩織……?」
「お菓子、くれなかったから……イタズラしただけだもん」
俯いて真っ赤になっている詩織を見て気付いたのは、胸元に揺れるペンダント。夏祭りの射的で取った景品で、俺がからかい半分に「こんなモンでも付けてれば、少しは女らしく見えるんじゃねェ?」と渡したおもちゃだ。あの頃は未だ、俺も自分の気持ちには気付いていなかった。……いや、気付かないフリをしようとしてただけか。
だが、こんなおもちゃを後生大事に持ってただけじゃなく、わざわざ付けて来たって事は――。
「ずいぶん可愛いイタズラだな」
「だって昨日銀ちゃんが!……やった事だし……」
一瞬顔を上げて叫んだものの、恥ずかしくなったのかまたすぐに詩織は俯いてしまい、語尾が小さくなる。ああもう何でこんなに可愛いんだろうな。こんな姿を見せられたら、自制が効かなくなるのも仕方ないってもんだ。
「俺がやったのは、こう、だろ?」
「銀……っ!」
強引に顎を持ち上げ、キスをする。舌を挿し入れて中を探ってやれば、今日は飴が無いはずなのに強烈な甘さを感じた気がした。
「良い大人だってのに、素直じゃねェのな、俺たち」
「銀ちゃん……」
俺のキスで頬を上気させている詩織が愛おしい。その顔を見てこみ上げる思いをぐっと抑えながら、今度は触れるだけのキスをして、言った。
「好きだ」
「ん……」
答える間を与えず、唇を塞ぐ。返事を聞くまでの時間を、少しでも引き延ばしたかったから。確信があるはずなのに、情けないとは思いつつも万が一に怯えた。
「お前が好きだ、詩織」
覚悟を決めてもう一度、囁くように言う。俺の言葉を聞き、蕩けて潤んだ眼差しで見上げて来た詩織は、何も言わなかった。その代わりに、詩織の眦から一筋の涙が零れ落ちる。
詩織が口角を上げてゆっくりと頷くのを確認した俺は、照れ隠しに「イタズラが、最高に甘い菓子になっちまったな」と言うと、再び詩織に深いキスを落とした。
~了~
「ちっとばかし強引だったよな」
公園で、苦手な味の飴を食べながら困っていた顔が可愛くて。代わりに食べてやると言う無理やりな理由を付けて、キスをした。
ずっと側にいながらも、まだ一度もお互いの気持ちなんざ確認した事は無い。俺自身の心は分かっていても、詩織が俺をどう思っているかを知るのは怖かったから。
「……くそっ!」
行動に移してしまえば、今までの関係は崩れてしまうかもしれないと分かっていたはずなのに。だが、今更後悔しても遅い。
「さり気なく『大好き』っつってみたけど、アイツの事だから気付いてねェんだろうな」
詩織と別れ、姿が見えなくなってから出てくるのは大きなため息ばかり。
「明日からどんな顔して詩織に会えば良いんだよ」
机の上に置いた、詩織から奪うようにして持ち帰った飴の袋を見ながら、俺は頭を抱えるしか無かった。
そして、翌日。
「トリックオアトリート!」
「へ?……うわっ!」
来客に気付き、玄関の戸を開けた途端、飛びついて来たのは詩織。少しだけ怒った表情の詩織は、尻もちをついた俺の膝に座り、まっすぐに見つめて来た。
「ハロウィンは今日だよ。昨日の呪文は無効だからね」
「え? あ、はい……」
言われてみれば、確かに今日がハロウィン当日だ。でも正直なところ、俺にはハロウィンなんてモンはどうでも良くて。ただ詩織が俺をどう思っているのかだけが気になっていた。
「トリックオアトリート! ねぇ、答えてよ」
「いや、答えろっつったって、菓子なんて置いてねーぞ」
「それじゃ、イタズラで良いよね?」
そう言った詩織は、俺の顔を両手でガッシリと挟み込む。何がしたいのかが分からず、ただ固まっていた俺に顔を近付けてきた詩織は、鼻先がくっつきそうな程に近付いて一旦止まった。しかも「やっぱ怖い」と呟いたその顔は何故か泣きそうだ。それでも意を決したようにギュッと目を瞑ると、俺の頬に口付けた。
「詩織……?」
「お菓子、くれなかったから……イタズラしただけだもん」
俯いて真っ赤になっている詩織を見て気付いたのは、胸元に揺れるペンダント。夏祭りの射的で取った景品で、俺がからかい半分に「こんなモンでも付けてれば、少しは女らしく見えるんじゃねェ?」と渡したおもちゃだ。あの頃は未だ、俺も自分の気持ちには気付いていなかった。……いや、気付かないフリをしようとしてただけか。
だが、こんなおもちゃを後生大事に持ってただけじゃなく、わざわざ付けて来たって事は――。
「ずいぶん可愛いイタズラだな」
「だって昨日銀ちゃんが!……やった事だし……」
一瞬顔を上げて叫んだものの、恥ずかしくなったのかまたすぐに詩織は俯いてしまい、語尾が小さくなる。ああもう何でこんなに可愛いんだろうな。こんな姿を見せられたら、自制が効かなくなるのも仕方ないってもんだ。
「俺がやったのは、こう、だろ?」
「銀……っ!」
強引に顎を持ち上げ、キスをする。舌を挿し入れて中を探ってやれば、今日は飴が無いはずなのに強烈な甘さを感じた気がした。
「良い大人だってのに、素直じゃねェのな、俺たち」
「銀ちゃん……」
俺のキスで頬を上気させている詩織が愛おしい。その顔を見てこみ上げる思いをぐっと抑えながら、今度は触れるだけのキスをして、言った。
「好きだ」
「ん……」
答える間を与えず、唇を塞ぐ。返事を聞くまでの時間を、少しでも引き延ばしたかったから。確信があるはずなのに、情けないとは思いつつも万が一に怯えた。
「お前が好きだ、詩織」
覚悟を決めてもう一度、囁くように言う。俺の言葉を聞き、蕩けて潤んだ眼差しで見上げて来た詩織は、何も言わなかった。その代わりに、詩織の眦から一筋の涙が零れ落ちる。
詩織が口角を上げてゆっくりと頷くのを確認した俺は、照れ隠しに「イタズラが、最高に甘い菓子になっちまったな」と言うと、再び詩織に深いキスを落とした。
~了~
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