まるで花火のようなあなたに(銀時)
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遠くで花火の音がした。
そう言えば今日は花火大会だったな、と二階の窓のカーテンを開けてみると、見慣れた景色の向こうに見える鮮やかな光の輪。
「家から花火が見えるってのは、贅沢よね」
部屋の電気を消して窓を開け、窓枠にもたれかかってぼんやりと見ていれば、いくつもの花が空を彩った。
開いては閉じ、咲いては散り。ほんの一瞬の美しさを見せるためだけの存在に、見惚れながらも儚さを感じていると、不意に目の前を影が覆った。
驚いて目を瞬かせると、そこにいたのは、私が働いている食堂で『宇治金時丼』という、有り得ない注文をしてくる常連。知る人ぞ知る、万事屋の坂田銀時だった。
「ビックリした……! 何でこんな所に現れるのよ」
彼が立っているのは屋根の上。修理でも無い限り、人が居るはずのない場所だ。
「ちょっと特等席を探しに……ってか」
そう言うと銀時は、花火の方向を向いた。
「なァ、ここって花火が見やすいよな」
「そりゃまぁ、すぐそばで打ち上げてるしね」
「やっぱり? 詩織ん家の場所って、絶好のポジションで良いよなァ」
チラチラと私の顔色を伺いつつ、部屋に視線を送る銀時。誰が見ても分かるあからさまな態度に、私は苦笑するしかなかった。
「二人までしか見られない、特等席なんだけど」
仕方ないなとため息を吐きつつ、私がスペースを広めに開けると、一瞬で開く大輪の花。その満面の笑みは、本物の花火よりも鮮やかで、思わず目を奪われた。
いそいそと部屋に入って来る銀時を見ながら思う。
ーーこんなに素敵な笑顔を独り占め出来ちゃう特等席、か。
姿を現わすと皆が注目し、心惹かれる花火のような存在。かぶき町の者たちが、この男に惹かれる理由が分かったような気がして、不思議と温かい気持ちになる。
ーーこのひと時を、花火のようなあなたと過ごせるのも悪くないかもね。
素直にそう思った私の胸は、いつしか鼓動を速めていて。
「おー、すげェよく見える!」
大空を彩る花火よりも、それを見てはしゃぐ銀時に気を取られてしまう。
そんな私の視線に気付いたのか、銀時の笑顔が曇った。
「あー……やっぱ邪魔だったか?」
「え? ううん、そんな事ないよ。ただ銀時があまりに嬉しそうな顔をしてたから」
気を遣わせてしまったかと慌てて答えれば、複雑な顔を見せる銀時。
「そんなの当たり前だってーの」
そう言った銀時は、私の肩に手をかけた。
「詩織と二人だけで、花火を楽しめてるんだぜ。嬉しくねーはずねェだろ」
吐息が、頬に触れる。その意図を理解した私が息を飲むと、銀時が更に続けた。
「NOなら殴って良いぜ。でもお前が受け入れてくれんなら、目ェ瞑ってくれよ」
唇が触れる寸前の距離でその先を委ねられ、戸惑ってしまう。でも私の心は、すぐに答えを導き出した。
ヒュルヒュルと鳴る花火の音を聞きながら、ゆっくり目を瞑るとーー。
「やっぱ花火より、お前を見てる方が良いわ。……好きだぜ、詩織」
花火の開く音と共に聞こえた告白は、重ねられた唇の熱を伴って、私の心へと伝わった。
〜了〜
そう言えば今日は花火大会だったな、と二階の窓のカーテンを開けてみると、見慣れた景色の向こうに見える鮮やかな光の輪。
「家から花火が見えるってのは、贅沢よね」
部屋の電気を消して窓を開け、窓枠にもたれかかってぼんやりと見ていれば、いくつもの花が空を彩った。
開いては閉じ、咲いては散り。ほんの一瞬の美しさを見せるためだけの存在に、見惚れながらも儚さを感じていると、不意に目の前を影が覆った。
驚いて目を瞬かせると、そこにいたのは、私が働いている食堂で『宇治金時丼』という、有り得ない注文をしてくる常連。知る人ぞ知る、万事屋の坂田銀時だった。
「ビックリした……! 何でこんな所に現れるのよ」
彼が立っているのは屋根の上。修理でも無い限り、人が居るはずのない場所だ。
「ちょっと特等席を探しに……ってか」
そう言うと銀時は、花火の方向を向いた。
「なァ、ここって花火が見やすいよな」
「そりゃまぁ、すぐそばで打ち上げてるしね」
「やっぱり? 詩織ん家の場所って、絶好のポジションで良いよなァ」
チラチラと私の顔色を伺いつつ、部屋に視線を送る銀時。誰が見ても分かるあからさまな態度に、私は苦笑するしかなかった。
「二人までしか見られない、特等席なんだけど」
仕方ないなとため息を吐きつつ、私がスペースを広めに開けると、一瞬で開く大輪の花。その満面の笑みは、本物の花火よりも鮮やかで、思わず目を奪われた。
いそいそと部屋に入って来る銀時を見ながら思う。
ーーこんなに素敵な笑顔を独り占め出来ちゃう特等席、か。
姿を現わすと皆が注目し、心惹かれる花火のような存在。かぶき町の者たちが、この男に惹かれる理由が分かったような気がして、不思議と温かい気持ちになる。
ーーこのひと時を、花火のようなあなたと過ごせるのも悪くないかもね。
素直にそう思った私の胸は、いつしか鼓動を速めていて。
「おー、すげェよく見える!」
大空を彩る花火よりも、それを見てはしゃぐ銀時に気を取られてしまう。
そんな私の視線に気付いたのか、銀時の笑顔が曇った。
「あー……やっぱ邪魔だったか?」
「え? ううん、そんな事ないよ。ただ銀時があまりに嬉しそうな顔をしてたから」
気を遣わせてしまったかと慌てて答えれば、複雑な顔を見せる銀時。
「そんなの当たり前だってーの」
そう言った銀時は、私の肩に手をかけた。
「詩織と二人だけで、花火を楽しめてるんだぜ。嬉しくねーはずねェだろ」
吐息が、頬に触れる。その意図を理解した私が息を飲むと、銀時が更に続けた。
「NOなら殴って良いぜ。でもお前が受け入れてくれんなら、目ェ瞑ってくれよ」
唇が触れる寸前の距離でその先を委ねられ、戸惑ってしまう。でも私の心は、すぐに答えを導き出した。
ヒュルヒュルと鳴る花火の音を聞きながら、ゆっくり目を瞑るとーー。
「やっぱ花火より、お前を見てる方が良いわ。……好きだぜ、詩織」
花火の開く音と共に聞こえた告白は、重ねられた唇の熱を伴って、私の心へと伝わった。
〜了〜
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