いい夫婦の日(土方)
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「ねぇ、今日って何の日か知ってる?」
それは、いつも通りの朝。
新聞に目を通しながら、マヨネーズたっぷりのパンをかじる夫の十四郎に、私は言った。
「あん? 何だよいきなり」
新聞から目を離さず、だるそうに十四郎が答える。
そりゃまぁそうでしょうよ。
真面目が取り柄の我が夫。顔は良いし仕事はできるけど、女の気持ちなど全然分かってない朴念仁だからねぇ。でも女としては、意味もなく聞いてみたくなるのですよ。
それならば、と私はめげず、コーヒーのお代わりを注ぎながらヒントを出した。
「今日は11月22日だよ」
「はぁ? んなの知らねーよ。ったく、朝の忙しい時にわけの分かんねー事言うなっての」
不機嫌を露わにしながらブツブツと言う十四郎にがっかりする。
明らかに答えを求めているのを分かっていながら、考えてもくれないか。
仕方なく私は、「あっそ」とだけ言うと、キッチンに戻った。
結婚して初めて迎えた良い夫婦の日。メディアに踊らされているのは分かってるけど、それでもちょっとしたラブラブムードがあったら良いな、なんて思ってたんだけどなぁ。
キッチンに置いているスツールに座り、シュンと落ち込んでいると……。
「おい、詩織」
出かける準備が整った十四郎に呼ばれ、零れそうになっていた涙を慌てて拭いた。
「あ、はい」
「行ってくる。……寝室の片付けしておけよ」
「は?」
いつもはただ「行ってくる」だけの十四郎が、珍しく家事について言ってきた。
そんなに汚れていただろうかと不安になり、「行ってらっしゃい」もそこそこに寝室に向かうと、そこに置かれていたのは小さな花かごとカード。
驚きながらカードを手に取ってみれば、ホテル名と部屋番号、そしてカードキーが挟まっていて。
そこは未だ結婚前に、デートで初めて泊まったホテルだった。
――今夜7時に
このメッセージの意味に気付き、私はカードを引っ掴むと急いで玄関へと走る。
慌ただしく出て行ったのか、散乱していたサンダルを履いてドアを開けると、小走りに遠のいていく十四郎の姿が見えて。
遠目からでも頬が赤いのが分かり、思わず笑みが浮かんだ。
「行ってらっしゃ~い!」
叫びながら手を振れば、背を向けたまま手を挙げる十四郎。
私はその姿が見えなくなるまで、ブンブンと大きく手を振り続けた。
今日は忘れられない日になりそうだ。
良い夫婦の日に、乾杯。
~了~
それは、いつも通りの朝。
新聞に目を通しながら、マヨネーズたっぷりのパンをかじる夫の十四郎に、私は言った。
「あん? 何だよいきなり」
新聞から目を離さず、だるそうに十四郎が答える。
そりゃまぁそうでしょうよ。
真面目が取り柄の我が夫。顔は良いし仕事はできるけど、女の気持ちなど全然分かってない朴念仁だからねぇ。でも女としては、意味もなく聞いてみたくなるのですよ。
それならば、と私はめげず、コーヒーのお代わりを注ぎながらヒントを出した。
「今日は11月22日だよ」
「はぁ? んなの知らねーよ。ったく、朝の忙しい時にわけの分かんねー事言うなっての」
不機嫌を露わにしながらブツブツと言う十四郎にがっかりする。
明らかに答えを求めているのを分かっていながら、考えてもくれないか。
仕方なく私は、「あっそ」とだけ言うと、キッチンに戻った。
結婚して初めて迎えた良い夫婦の日。メディアに踊らされているのは分かってるけど、それでもちょっとしたラブラブムードがあったら良いな、なんて思ってたんだけどなぁ。
キッチンに置いているスツールに座り、シュンと落ち込んでいると……。
「おい、詩織」
出かける準備が整った十四郎に呼ばれ、零れそうになっていた涙を慌てて拭いた。
「あ、はい」
「行ってくる。……寝室の片付けしておけよ」
「は?」
いつもはただ「行ってくる」だけの十四郎が、珍しく家事について言ってきた。
そんなに汚れていただろうかと不安になり、「行ってらっしゃい」もそこそこに寝室に向かうと、そこに置かれていたのは小さな花かごとカード。
驚きながらカードを手に取ってみれば、ホテル名と部屋番号、そしてカードキーが挟まっていて。
そこは未だ結婚前に、デートで初めて泊まったホテルだった。
――今夜7時に
このメッセージの意味に気付き、私はカードを引っ掴むと急いで玄関へと走る。
慌ただしく出て行ったのか、散乱していたサンダルを履いてドアを開けると、小走りに遠のいていく十四郎の姿が見えて。
遠目からでも頬が赤いのが分かり、思わず笑みが浮かんだ。
「行ってらっしゃ~い!」
叫びながら手を振れば、背を向けたまま手を挙げる十四郎。
私はその姿が見えなくなるまで、ブンブンと大きく手を振り続けた。
今日は忘れられない日になりそうだ。
良い夫婦の日に、乾杯。
~了~
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