欲しがり(銀時)
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今私は、猛烈に緊張している。
それはもう尋常じゃなくて、今まで生きてきた中で一番と言って良いレベルの緊張だ。
ちなみに日時は10月9日の23時55分。そして場所は万事屋の前だったりする。
「あと3分」
ドキドキしながら、時間が過ぎるのを待つ。決してタイミングを間違えてはいけないからと、何度も脳内シミュレーションはしてきた。だからきっと上手くいくはず!
「あと1分」
両手に抱えた箱をもう一度チェックし、できるだけ呼吸を整える。
「10秒前」
さあ、カウントダウンの始まりだ。
「9、8、7、6……」
箱を片手で支え、空いた手を戸にかける。
「5、4、3、2……」
残り1秒のタイミングで、戸にかけた手に力を込めーー
「銀さん、お誕生日お……!!」
ーーーーーーえ?
何が起こっているのか分からないまま、紡ぎきれなかった言葉と共に息を飲む。と同時にぬるりとした熱が唇を割って押し込まれた。
「ふ……っ」
ゾクゾクと痺れるような感覚が背中を走っていく。それは初めて経験するものなのに驚くほど心地よくて、思わず吐息が漏れた。
その吐息が合図になったのか、熱が遠のく。火照り始めた体を叱咤して目の前の存在に意識を集中すれば、そこには銀さんがニヤリと満足げに笑って立っていた。
「あ……」
何か言わなきゃと思うのに、思いもよらない展開で言葉が見つからない。だって頭の中は完全にパニック状態だから。
ーー私今、銀さんとキスした? 何で? どうして? だって私は未だーー
銀さんと顔見知りになり、気安く話ができるようになってから半年ほど経っている。でも私の中に燻る感情を伝えるきっかけが見つからなくて。未だに、気心の知れた友達程度の関係だった。だからこそこの展開は、私を混乱させるばかりだ。
とは言え、ここには目的があって来ているわけで。それを有耶無耶にはしたくない。動揺をそのままに、私は言った。
「えっと、あの……お誕生日おめでとう、銀さん」
先程紡ぎきれなかった言葉と共に、持ってきた箱を差し出す。当の銀さんはそれを嬉しそうに受け取ると、早速その場で中身を確認し始めた。それが手作りケーキだと分かると、更に笑みを深める。
「すげェ美味そー。あんがとよ。しかし2つもプレゼントを準備してくれるたァ、大盤振る舞いじゃねーの」
「へ? 2つ?」
不意に言われた2つという言葉に、浮かぶ疑問符。だって私が準備したのはケーキだけだったから。
何をもって2つと言っているのかが気になり、首を傾げる。そんな私を見て銀さんは言った。
「さっき受け取ったじゃねェか。お前は絶対、日付が変わった瞬間に来るだろうと思ってたしよ。だから玄関で待ち伏せして、タイミングを合わせてプレゼントを頂いたってわ・け」
悪戯な笑みで自らの唇をトントンと叩いて見せる銀さん。そしてその指で今度は私の唇に触れた。
「でもまァあれはこっちから強引に奪いにいっちまってたわけだし……できれば改めてお前の意思でお願いしてェんだけど」
ゆっくりと顔が近づく。吐息のかかる距離で正面から見た銀さんの瞳は破壊力抜群で、心臓が爆発しそうになった。
「あ、あの、私……っ」
次から次へと起きる予想外の出来事に、頭がついていかない。これはどう受け取れば良いの? どう答えるのが正解なの?
考えがまとまらず、固まったままの私に呆れたのか、銀さんが言う。
「嫌なら無理すんな。誕生日にかこつけてお前からのキスを欲しがってんのは、銀さんのわがままだしな」
それは、驚きの言葉。
私からのキスが欲しいってことはつまり、銀さんは私をーー
「それ、本気?」
どうしても気になって、聞かずにはいられなかった。
「当たり前だろ」
「揶揄ってるわけじゃなく?」
「銀さんってばそんなに信用ねーのかよ」
「だって……私なんかで良いの?」
「……ばァか」
話を切るかのように言った銀さんが、少しだけ前のめりになる。そして私の耳元に口を近づけ、囁いた。
「欲しいのは詩織、お前のだけだっつーの」
ゾクリと体が震える。再び目の前に現れた銀さんの瞳に、心が揺さぶられた。
「で、どうすんの?」
そう言ってペロリと唇を舐めてみせる銀さんの瞳は妖しく光り、抗うことを許さない。
覚悟を決めてコクリと頷く。それを見て満足げにうんうんと頷いた銀さんは、
「んじゃ、仕切り直しってことで」
と言って目を閉じた。
恥ずかしさと緊張を携えてゆっくりと顔を近づけた私は、そっと銀さんに口付ける。
「……お誕生日おめでとう、銀さん」
触れていられたのはほんの1秒。とにかく照れ臭さに耐えきれず、急いで離れようとした。
ところが銀さんに腕を掴まれ、ぐいと引っ張られる。背中越しに、戸が閉められる音が聞こえた。
「ぎ、銀さん!?」
「やっぱ我慢できねーわ」
「我慢って何を、ん……っ」
強引に塞がれた唇は、それ以上言葉を紡げない。
再び絡みついてきた舌に翻弄される。やがて膝に力の入らなくなった私を抱き上げた銀さんは、熱を帯びた潤んだ瞳で言った。
「キスだけじゃなくて、詩織の全てが欲しいってこと」
〜了〜
2022/10/10
Happy birthday 銀時
創作をしたのはほぼ1年ぶりかなぁ。
色々と忙しくてサイトも閉鎖したし、もう創作は無理かと思ってたけど、どうしても関わりたくて勢いで書いちゃいました。
とは言えやっぱり書くのが難しくなってたなぁ。元々文才は無いけれど、更に語彙のストックが消滅してて(号泣)
年々物忘れがひどくなってる気がします。更年期怖い。
兎にも角にもおめでとう、銀時!
今でもやっぱり大好きだ〜〜!
それはもう尋常じゃなくて、今まで生きてきた中で一番と言って良いレベルの緊張だ。
ちなみに日時は10月9日の23時55分。そして場所は万事屋の前だったりする。
「あと3分」
ドキドキしながら、時間が過ぎるのを待つ。決してタイミングを間違えてはいけないからと、何度も脳内シミュレーションはしてきた。だからきっと上手くいくはず!
「あと1分」
両手に抱えた箱をもう一度チェックし、できるだけ呼吸を整える。
「10秒前」
さあ、カウントダウンの始まりだ。
「9、8、7、6……」
箱を片手で支え、空いた手を戸にかける。
「5、4、3、2……」
残り1秒のタイミングで、戸にかけた手に力を込めーー
「銀さん、お誕生日お……!!」
ーーーーーーえ?
何が起こっているのか分からないまま、紡ぎきれなかった言葉と共に息を飲む。と同時にぬるりとした熱が唇を割って押し込まれた。
「ふ……っ」
ゾクゾクと痺れるような感覚が背中を走っていく。それは初めて経験するものなのに驚くほど心地よくて、思わず吐息が漏れた。
その吐息が合図になったのか、熱が遠のく。火照り始めた体を叱咤して目の前の存在に意識を集中すれば、そこには銀さんがニヤリと満足げに笑って立っていた。
「あ……」
何か言わなきゃと思うのに、思いもよらない展開で言葉が見つからない。だって頭の中は完全にパニック状態だから。
ーー私今、銀さんとキスした? 何で? どうして? だって私は未だーー
銀さんと顔見知りになり、気安く話ができるようになってから半年ほど経っている。でも私の中に燻る感情を伝えるきっかけが見つからなくて。未だに、気心の知れた友達程度の関係だった。だからこそこの展開は、私を混乱させるばかりだ。
とは言え、ここには目的があって来ているわけで。それを有耶無耶にはしたくない。動揺をそのままに、私は言った。
「えっと、あの……お誕生日おめでとう、銀さん」
先程紡ぎきれなかった言葉と共に、持ってきた箱を差し出す。当の銀さんはそれを嬉しそうに受け取ると、早速その場で中身を確認し始めた。それが手作りケーキだと分かると、更に笑みを深める。
「すげェ美味そー。あんがとよ。しかし2つもプレゼントを準備してくれるたァ、大盤振る舞いじゃねーの」
「へ? 2つ?」
不意に言われた2つという言葉に、浮かぶ疑問符。だって私が準備したのはケーキだけだったから。
何をもって2つと言っているのかが気になり、首を傾げる。そんな私を見て銀さんは言った。
「さっき受け取ったじゃねェか。お前は絶対、日付が変わった瞬間に来るだろうと思ってたしよ。だから玄関で待ち伏せして、タイミングを合わせてプレゼントを頂いたってわ・け」
悪戯な笑みで自らの唇をトントンと叩いて見せる銀さん。そしてその指で今度は私の唇に触れた。
「でもまァあれはこっちから強引に奪いにいっちまってたわけだし……できれば改めてお前の意思でお願いしてェんだけど」
ゆっくりと顔が近づく。吐息のかかる距離で正面から見た銀さんの瞳は破壊力抜群で、心臓が爆発しそうになった。
「あ、あの、私……っ」
次から次へと起きる予想外の出来事に、頭がついていかない。これはどう受け取れば良いの? どう答えるのが正解なの?
考えがまとまらず、固まったままの私に呆れたのか、銀さんが言う。
「嫌なら無理すんな。誕生日にかこつけてお前からのキスを欲しがってんのは、銀さんのわがままだしな」
それは、驚きの言葉。
私からのキスが欲しいってことはつまり、銀さんは私をーー
「それ、本気?」
どうしても気になって、聞かずにはいられなかった。
「当たり前だろ」
「揶揄ってるわけじゃなく?」
「銀さんってばそんなに信用ねーのかよ」
「だって……私なんかで良いの?」
「……ばァか」
話を切るかのように言った銀さんが、少しだけ前のめりになる。そして私の耳元に口を近づけ、囁いた。
「欲しいのは詩織、お前のだけだっつーの」
ゾクリと体が震える。再び目の前に現れた銀さんの瞳に、心が揺さぶられた。
「で、どうすんの?」
そう言ってペロリと唇を舐めてみせる銀さんの瞳は妖しく光り、抗うことを許さない。
覚悟を決めてコクリと頷く。それを見て満足げにうんうんと頷いた銀さんは、
「んじゃ、仕切り直しってことで」
と言って目を閉じた。
恥ずかしさと緊張を携えてゆっくりと顔を近づけた私は、そっと銀さんに口付ける。
「……お誕生日おめでとう、銀さん」
触れていられたのはほんの1秒。とにかく照れ臭さに耐えきれず、急いで離れようとした。
ところが銀さんに腕を掴まれ、ぐいと引っ張られる。背中越しに、戸が閉められる音が聞こえた。
「ぎ、銀さん!?」
「やっぱ我慢できねーわ」
「我慢って何を、ん……っ」
強引に塞がれた唇は、それ以上言葉を紡げない。
再び絡みついてきた舌に翻弄される。やがて膝に力の入らなくなった私を抱き上げた銀さんは、熱を帯びた潤んだ瞳で言った。
「キスだけじゃなくて、詩織の全てが欲しいってこと」
〜了〜
2022/10/10
Happy birthday 銀時
創作をしたのはほぼ1年ぶりかなぁ。
色々と忙しくてサイトも閉鎖したし、もう創作は無理かと思ってたけど、どうしても関わりたくて勢いで書いちゃいました。
とは言えやっぱり書くのが難しくなってたなぁ。元々文才は無いけれど、更に語彙のストックが消滅してて(号泣)
年々物忘れがひどくなってる気がします。更年期怖い。
兎にも角にもおめでとう、銀時!
今でもやっぱり大好きだ〜〜!
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