傍に居させて(銀時)
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「なァ、それって同情?」
抑揚の無い声に、背筋をヒヤリと冷たいものが走る。
──ひょっとして私、銀さんの地雷を踏んじゃった?
「違う、そんなんじゃなくて、私……」
「そんなんじゃなくて、何?」
詰め寄るように言う銀さん。
白銀の髪が、私の髪にからまる。
耳に触れる吐息が、熱い。
「同情じゃねェのなら……」
「……っ!」
熱い吐息に遅れて私の耳に触れた柔らかいもの。それが銀さんの唇だと理解した私が大きく肩を揺らすと、銀さんは喉の奥でククッと笑って軽く耳を食んだ。
「ぎん……さん……」
言葉にならない感覚が全身を襲う中、絞り出すように名を呼ぶ。すると銀さんの唇が、私の耳を食んだままゆっくりと動いた。
口の形を四回変え、最後にチュッとリップ音を立てる。唇が離れた直後、「んなわきゃねーか」という声が聞こえたような気がしたけれど、空耳だったんだろうか。
兎にも角にも、恥ずかしさを堪えつつ振り向くと、その大胆な行動とは裏腹に、私を見る銀さんの瞳は切ない色をしていた。
「どうし──」
「今日はありがとな。美味かった」
どうしてそんな目で私を見るの? と訊きたかったのに。重ねられたセリフは、一瞬で銀さんをいつもの死んだ魚のような目に戻してしまったから。
「……」
言葉に詰まる。
黙ってこの場を去れば、この先も銀さんは何事もなかったように私に接してくるだろう。
でも私は納得がいかない。
あんな表情を見せられて。耳元であんなことをされて。何事もなかったようになんてできない。できるはずがない。
今ここで言わなきゃだめだ。ずっと心の中でくすぶっていた物を伝えられるのはきっと、今この瞬間しかない。
「銀さん」
覚悟を決めて、名を呼んだ。
「なんだよ」
「私は松陽って人の代わりにはなれないけど、その人を想って苦しんでいる銀さんの傍らに寄り添うことはできるから」
「……ッ!」
「来年も、再来年も。その先もずっと銀さんの傍らにいるよ」
「詩織……」
「これは同情なんかじゃなくて……」
そこまで言って、気づいた。
あぁそうか。さっきのアレは──。
ゆっくりと手を上げ、銀さんが触れた耳をトントンと指差す。
「……だよ」
一瞬、何を言われたのか分からなかったんだろう。最初はキョトンとしていた銀さんの顔が、みるみる赤く染まっていく。
「マジか……」
そう言って手で顔を覆う銀さん。
耳元で音もなく紡がれた『あ・い・じょ・う』の四文字。私も音にはできなかったけれど、こうして伝わってくれたから。きっと今の私は、銀さんと同じく真っ赤な顔をしてるんだろう。
「ってなわけで、来年もお菓子パーティーをやっちゃっても良いかな〜?」
照れ隠しに賑やかす。私に合わせて銀さんが「オー!」とノッてくれたのが嬉しかった。
抑揚の無い声に、背筋をヒヤリと冷たいものが走る。
──ひょっとして私、銀さんの地雷を踏んじゃった?
「違う、そんなんじゃなくて、私……」
「そんなんじゃなくて、何?」
詰め寄るように言う銀さん。
白銀の髪が、私の髪にからまる。
耳に触れる吐息が、熱い。
「同情じゃねェのなら……」
「……っ!」
熱い吐息に遅れて私の耳に触れた柔らかいもの。それが銀さんの唇だと理解した私が大きく肩を揺らすと、銀さんは喉の奥でククッと笑って軽く耳を食んだ。
「ぎん……さん……」
言葉にならない感覚が全身を襲う中、絞り出すように名を呼ぶ。すると銀さんの唇が、私の耳を食んだままゆっくりと動いた。
口の形を四回変え、最後にチュッとリップ音を立てる。唇が離れた直後、「んなわきゃねーか」という声が聞こえたような気がしたけれど、空耳だったんだろうか。
兎にも角にも、恥ずかしさを堪えつつ振り向くと、その大胆な行動とは裏腹に、私を見る銀さんの瞳は切ない色をしていた。
「どうし──」
「今日はありがとな。美味かった」
どうしてそんな目で私を見るの? と訊きたかったのに。重ねられたセリフは、一瞬で銀さんをいつもの死んだ魚のような目に戻してしまったから。
「……」
言葉に詰まる。
黙ってこの場を去れば、この先も銀さんは何事もなかったように私に接してくるだろう。
でも私は納得がいかない。
あんな表情を見せられて。耳元であんなことをされて。何事もなかったようになんてできない。できるはずがない。
今ここで言わなきゃだめだ。ずっと心の中でくすぶっていた物を伝えられるのはきっと、今この瞬間しかない。
「銀さん」
覚悟を決めて、名を呼んだ。
「なんだよ」
「私は松陽って人の代わりにはなれないけど、その人を想って苦しんでいる銀さんの傍らに寄り添うことはできるから」
「……ッ!」
「来年も、再来年も。その先もずっと銀さんの傍らにいるよ」
「詩織……」
「これは同情なんかじゃなくて……」
そこまで言って、気づいた。
あぁそうか。さっきのアレは──。
ゆっくりと手を上げ、銀さんが触れた耳をトントンと指差す。
「……だよ」
一瞬、何を言われたのか分からなかったんだろう。最初はキョトンとしていた銀さんの顔が、みるみる赤く染まっていく。
「マジか……」
そう言って手で顔を覆う銀さん。
耳元で音もなく紡がれた『あ・い・じょ・う』の四文字。私も音にはできなかったけれど、こうして伝わってくれたから。きっと今の私は、銀さんと同じく真っ赤な顔をしてるんだろう。
「ってなわけで、来年もお菓子パーティーをやっちゃっても良いかな〜?」
照れ隠しに賑やかす。私に合わせて銀さんが「オー!」とノッてくれたのが嬉しかった。