傍に居させて(銀時)
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「うー……さすがに食べ過ぎたよね。ちょっと気持ち悪い」
「あーん? 銀さんの胃を舐めんじゃねェよ。甘いモンは別腹だ」
「いや別腹って、食後のデザートの場合でしょ? 今回は目一杯本腹に詰め込んでるじゃない」
お菓子しか入っていない胃の辺りを押さえながら、「もうお茶の一杯も入らない……」と呟く私に、銀さんが笑いながら言う。
「銀さんの体の八割は、甘い物専用の胃袋で出来てっかんね。ヤワな詩織と違って未だヨユーだわ」
「何それ化物? 残りの二割は不真面目とジャンプで出来てるってんじゃないでしょうね」
「うるせェよ」
私の言葉に納得がいかないと、頭に手を置いてワシワシと髪をかき乱す銀さん。
「やだもう、やめてよ!」
軽く頭を押さえられる事で下向きになり、胃が圧迫されるのが苦しくて。思わず強めに私が怒ると、銀さんの手の動きが止まった。でもその手は乗せられたままだった為、堪らず私が「ちょっと銀さん、手を……」と払いのけようとした時。
「悪ィな」
「……え?」
頭の上から聞こえて来たのは、言葉に出来ない程切なく優しい声だった。
「銀さん……?」
「さっきの菓子、全部銀さんの好きなモンばっかだったろ。気ィ使わせちまったな」
「……気付いてたんだ……」
頭から銀さんの手を外して顔を上げると、そこにはいつものちゃらんぽらんな姿とは程遠い、少し困った顔をした銀さんがいた。
「詩織こそ気付いてたんだな」
「まあね」
毎年この時期になると、銀さんは魘される事が多くなる。何度かその姿を見かけている内、寝言で呼ぶ名前がいつも同じだということに気づいた。その声はあまりに切なく悲しげで、さすがの私も詳細を訊くに訊けぬまま今日まできたけれど、魘されるサイクルだけは分かっていたから。新八くんも神楽ちゃんもいない場所で一人、銀さんを眠らせることだけは避けたかった。
「で? 満足できた?」
努めて明るく言った私は、散らばったゴミを集める。
「まあこんだけ食べて、満足してないはずないよね。でも血糖値が心配だから、これから暫く甘い物は控えるように」
ゴミ袋の口を縛り時計を見れば、そろそろ新八くん達が帰る時間になっていた。
「証拠隠滅の為、これは持って帰るね。念のため部屋は換気しておいてよ」
袋を手に、玄関へと向かう。「あ、おい!」と慌てて追いかけてくる銀さんに、靴を履いて振り向いた私は言った。
「来年もやろうね。お菓子パーティ」
「来年も?」
「うん。来年も、そのまた次の年もずーっと」
「ね?」と笑顔で念押しすれば、銀さんは戸惑いながらも頷く。それを確認した私も一つ大きく頷くと、玄関を出ようと万事屋の戸に手をかけた。
ところが、その戸を開く事は出来ない。
「ちょっと銀さん、何を……」
不意に私の背後に立った銀さんによって、戸は押さえられている。背中からの壁ドンという形で動けなくなった私に、銀さんは言った。
「あーん? 銀さんの胃を舐めんじゃねェよ。甘いモンは別腹だ」
「いや別腹って、食後のデザートの場合でしょ? 今回は目一杯本腹に詰め込んでるじゃない」
お菓子しか入っていない胃の辺りを押さえながら、「もうお茶の一杯も入らない……」と呟く私に、銀さんが笑いながら言う。
「銀さんの体の八割は、甘い物専用の胃袋で出来てっかんね。ヤワな詩織と違って未だヨユーだわ」
「何それ化物? 残りの二割は不真面目とジャンプで出来てるってんじゃないでしょうね」
「うるせェよ」
私の言葉に納得がいかないと、頭に手を置いてワシワシと髪をかき乱す銀さん。
「やだもう、やめてよ!」
軽く頭を押さえられる事で下向きになり、胃が圧迫されるのが苦しくて。思わず強めに私が怒ると、銀さんの手の動きが止まった。でもその手は乗せられたままだった為、堪らず私が「ちょっと銀さん、手を……」と払いのけようとした時。
「悪ィな」
「……え?」
頭の上から聞こえて来たのは、言葉に出来ない程切なく優しい声だった。
「銀さん……?」
「さっきの菓子、全部銀さんの好きなモンばっかだったろ。気ィ使わせちまったな」
「……気付いてたんだ……」
頭から銀さんの手を外して顔を上げると、そこにはいつものちゃらんぽらんな姿とは程遠い、少し困った顔をした銀さんがいた。
「詩織こそ気付いてたんだな」
「まあね」
毎年この時期になると、銀さんは魘される事が多くなる。何度かその姿を見かけている内、寝言で呼ぶ名前がいつも同じだということに気づいた。その声はあまりに切なく悲しげで、さすがの私も詳細を訊くに訊けぬまま今日まできたけれど、魘されるサイクルだけは分かっていたから。新八くんも神楽ちゃんもいない場所で一人、銀さんを眠らせることだけは避けたかった。
「で? 満足できた?」
努めて明るく言った私は、散らばったゴミを集める。
「まあこんだけ食べて、満足してないはずないよね。でも血糖値が心配だから、これから暫く甘い物は控えるように」
ゴミ袋の口を縛り時計を見れば、そろそろ新八くん達が帰る時間になっていた。
「証拠隠滅の為、これは持って帰るね。念のため部屋は換気しておいてよ」
袋を手に、玄関へと向かう。「あ、おい!」と慌てて追いかけてくる銀さんに、靴を履いて振り向いた私は言った。
「来年もやろうね。お菓子パーティ」
「来年も?」
「うん。来年も、そのまた次の年もずーっと」
「ね?」と笑顔で念押しすれば、銀さんは戸惑いながらも頷く。それを確認した私も一つ大きく頷くと、玄関を出ようと万事屋の戸に手をかけた。
ところが、その戸を開く事は出来ない。
「ちょっと銀さん、何を……」
不意に私の背後に立った銀さんによって、戸は押さえられている。背中からの壁ドンという形で動けなくなった私に、銀さんは言った。